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名前を呼ばれてハッと我に返った。
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涙を拭い、声のした方を向くと、
Aさんが戸惑った表情で俺を見ていた。
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「あっ、ああ…Aさん…!は、早いっすね!」
手にある花を花瓶に戻し、
震える声を抑えながら笑顔になって言った。
でも彼女はまだ表情を固めたまま、
『えっと…だ、いじょうぶ…?』
不安そうな声を出した。
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「あっ、これ、ちょっとここ、乾燥がひどくてドライアイで…!」
涙の理由をごまかしながら、
彼女に背を向け、もう一度目をこする。
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『あっ、そうなんだね。…びっくりしちゃった。』
彼女がそれを信じているかどうかはわからないけれど、
少しホッとした表情になり、俺の元へ近づいてきた。
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「あれっ、なんかAさん、いつもと雰囲気少し違う?」
髪の巻き方とか、洋服とか、
目元もいつもより華やかな感じがした。
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『そ、そうかな、いつもと一緒…だ、と思うけど…。』
「なんか、髪の毛もふわっとしてません?」
何気なしに近づき、髪の毛に触れる。
すると俺よりも少し背の低いAさんと目が合う。
上目遣いで顔を真っ赤にさせた彼女。
それに髪の毛から、優しくて甘い香りがふわっと香る。
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急に鼓動が激しく胸を打ち、
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「かわいい…っ」
俺は髪に触れていた手をスライドさせ、
そのまま彼女の頰を包んだ。
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作者名:Mother | 作成日時:2020年4月3日 21時