bl短編集××２[w.r.w.r.d]

◆ ページ18

×+×+×

微かな声で。
優しく囁く。
俺の名前を呼んでいた。



気づくとここは全く知らない場所。
はっきりとは分からない。
けど、何処か懐かしい場所。



耳元でずっとあの人の声が聞こえる。
周りを見渡しても見つからない。
傍に居るはずなのに。


焦った俺は走り出した。
分からない場所をあちこちと走り回った。
景色が変わったかと思えばまた同じ場所。


ずっと俺の名前は囁かれる。
手を伸ばせば届く距離におる筈なのに。
どこにも見当たらない。見つからない。


泣き出しそうだ。あの人の名前が出てこない。
名前を呼ぼうとすると声が出ない。
掠れた声が響く。



とうとう泣き出してしまった。
ずっと会いたかったあの人が。
居る筈なんだ。名前を呼べば会える。



無我夢中で走り回る。
会いたい一心で走り回る。
涙を拭うこと無く走り回る。
なのに、会えない。


とうやら、神は悪戯好きなようだ。



「…っ…ｶﾞっ……。」


あと少しで名前が言えるのに。



「…っ…ﾝっ…ｶﾞｧ…。」


言えるのに。


「____________。」



「…っ…。」



俺は夢の世界に入る目を閉じた。

◆→←os.ht.

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