日本の道化の月 Ⅱ【イナオリ】 (ページ37)

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『私、心の底から人を嫌いになったことがないんです。

小さい頃に母親が不倫して家を出て行った時も、母親のことを嫌いとは思えなかったし、成龍やサッカー部員達に近づくのが目的で友達のフリをしてきた子の事も、最後まで嫌いにはなれなかったんです。

なんでかわかりますか？』

鬼「それは……お前の心が広く強かったからじゃないのか？」

『アハハ！違いますよ～。私、強くも何ともないですからっ

……私が悲しんでる時、いつも周りには成龍や星章サッカー部の皆がいてくれたんです。

だから、辛いことがあってもすぐに忘れることができたんです。

……でも野坂悠馬は私の大事な人達を虫けらのような目で傷つけた。

私のプライドも、大切な人達も、何もかもを一瞬にして潰したあいつを、私は生涯許す事はきっとできません。……私、こう見えて結構根に持つタイプなんで』

そう言ったAは口は笑っていたが、瞳からは怒りと憎悪しか感じられなかった。

鬼「そうか……お前を最初に見た時は、掴み所のないひょうきんな奴だと思っていたが、ちゃんと人間味のあるやつとわかって安心したぞ」

『え～何ですかそれ、酷いですよ鬼道さん～』

鬼道はAを見て小さく笑った。

鬼「お前が野坂を許せないと思うならそれでいい。だがチームのためにお前にできることをしろ。

あいつらはお前の仲間なんだからな」

『仲間……えぇ、そうですね！皆とはちゃんと仲良くしますよ！』

鬼「あぁ、そうしてくれ」

『はーい！それじゃあ私そろそろ戻りますね！鬼道さんも早くチームに戻ってきてくださいねー！』

Aはそのままボールを片付けるために宿舎に戻っていった。

『仲間、ね……私の仲間は、今もこれからも星章イレブンだけさ。

ま、仲良くはしてあげますよ。

この大会が、終るまではね……』