心配:M ページ36
Aちゃんは、残り少ないココアを飲み干して、マグカップを洗い始めた。
たぶん、もうこれ以上言うことはない、というつもりだろう。
Aちゃんの泡に包まれる手を、何もできずに見つめた。自分のぶんのココアを飲み干すこともできず。
やがてさっさとマグカップを洗い終えたAちゃんは、俺を一瞬だけ見て、俺のマグカップがまだ空きそうにないのを確認してから水を止めた。
「……あたし、もう寝るね」
宮「あ、うん……」
まさか、翔太がそんな。
そんなひどいことをAちゃんに言っただなんて。
俺には意図がわからないし、にわかには信じがたい。
翔太がAちゃんを大切に想っていることには気づいていたし、そもそも翔太はむやみに人を傷つけるような人じゃない。
Aちゃんが俺の横をすり抜ける。
宮「……、待って！」
俺が翔太の代わりに謝るだとか、そういうことは完全に間違ってるってわかってる。
だけど、やっぱりいつかみたいに、幼馴染のフォローも欠かさない俺でいたいんだ。
宮「翔太がなんでそんなこと言ったのか、俺にはわからないけど……でも、翔太は、理由もなく人を傷つける人じゃないから、それだけは」
「わかってるよ。なべしょは優しい人だもん。でも、もし理由があったとしたら、それはそれで傷つくなぁ」
まただ。
また、傷ついた表情をさせてしまった。
無理に笑わせてしまった。
やっぱり、俺にはどうにかできることじゃない。
Aちゃんのことは翔太が、翔太のことはAちゃんが、解決するしかないんだ。
謝ることは、翔太にもAちゃんにも失礼かと思い、しなかった。
無言になった俺を受けて、Aちゃんはまた歩き出す。
「だてさん、ありがとう。おやすみ」
お礼なんて、言わせてしまって。
情けなくなるから、やめてくれ。
なにかを解決させようと、Aちゃんを変えようと、安易に首だけ突っ込んで結局なにもできなかったことが、情けなくなるから。
今はただ翔太への心配と、怒りにも似た緩やかな揺らぎとの狭間で、うっすらミルクの膜を張り出したココアを眺めることしかできない。
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しょぴお - このお話すごく好きでした。今まで更新お疲れ様です。ずっと読んでました。笑 お話の終わり方がすごい、いい感じですね。このお話大好きです。 (2019年5月31日 19時) (
レス) id: d08dff729e (このIDを非表示/違反報告)
れいな(プロフ) - 続編待ってます。 (2019年5月30日 11時) (レス) id: f9aa5203aa (このIDを非表示/違反報告)
Momanao(プロフ) - 続編、楽しみにしてます！なんか...嵐が吹き荒れる予感が... (2019年5月16日 1時) (レス) id: a8ed6fc393 (このIDを非表示/違反報告)
しょぴお - 話を読んでて泣きそうになった…。いや、泣く笑 (2019年5月14日 22時) (レス) id: d08dff729e (このIDを非表示/違反報告)
ミックスジュース(プロフ) - なべしょに頑張って欲しい！この作品大好きです！！これからも頑張って下さい！楽しみしています(^○^) (2019年5月14日 20時) (レス) id: 6b8cfc92fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おかゆ
| 作成日時：2019年2月1日 14時
