おつかい:I ページ18
「うーわ、ザーッと来そうな感じだね」
岩「マジかよ、傘なんてねーぞ」
「うまく帰れば降られずに済むかなぁ」
買い物を終えてスーパーを出ると、どんよりと重たい雲が空を覆っていた。
空気は心なしかさっきよりも湿り気を帯びているようで、今にもドシャッと降ってきそうだ。
「あー、雨の匂いする」
前カゴに買い物袋を突っ込んで、念のため口を軽く縛る。
岩「ほら、さっさと帰るぞ」
きた時と同じように、Aを後ろに乗せて、ペダルを踏み込む。
暑くて湿っぽい、夏の夕方の空気だ。
「うわ、今一滴雨感じた！」
岩「マジか。じゃあ急ぐぞ！」
「えっ、おっ、おわわ！」
グッと力を入れて踏み込んだ衝撃で、車体がゆらりと揺れる。Aが、驚いた声を上げて、俺の背中に手が触れる。それに、一瞬ドキリと胸が跳ねた。
岩「雑にこぐから、気をつけろよ！」
「ひぇっ！！やばい！そんな無責任な！」
Aが、さっきよりもしっかりと、俺の背中に捕まる。
俺は変な気を紛らわせるみたいに、黙々とペダルを踏んだ。
だけれど、俺の脚力は夏の夕立ちの気まぐれさには敵わなかったようで。
岩「やばい！降ってきた」
ポツポツと、大粒の雨が全身を濡らすようになった。
「これ一気に来るやつだ！この雲の降雨のポテンシャルやばそうだもん！」
Aの妙な表現を聞き雲を見上げれば、確かに、重く分厚そうな暗い雲が、空を占拠していた。
岩「一旦雨宿りするか？！」
「……どこで？」
岩「確かに……じゃ、ぶっちぎるぞ！」
「ギャーーッ！なんかテンションあがってきた！」
俺がさらにスピードを上げれば、Aの声量も上がった。楽しそうに後ろでけらけら笑っている。
どんどん勢いを増して降って来る雨が、顔を、腕を、ももを打って、じんわりと濡れていく。
「やばいやばい！めっちゃ降ってきた！」
Aは、いつの間にか俺の背中にがっしりと捕まって、より一層はしゃいでいる。
岩「楽しそうだなぁ！」
「楽しい！なんか青春してるみたいで、めっちゃ楽しい！」
バケツをひっくり返したように体を叩きつける雨。それなのにまとわりつくように暑い夏の風。
雨で滑るハンドル。体にぴったりと張り付いてしまったTシャツ。
背中に伝わる、Aの体温。
心底楽しそうにはしゃぐ、幸せそうな声。
色んなものが合わさって、変な気持ちだった。
日常のなんてことない出来事が、まるで非日常みたいに輝いていた。
空はこんなに曇っているのに、俺の心は間違いなく快晴だった。
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すずの(プロフ) - しょっぴーしんどみが深いです！ (2019年5月5日 2時) (
レス) id: 0281d1cc7e (このIDを非表示/違反報告)
もやし(プロフ) - 改めて最初から読み直しました！！しょっぴーが切ない…。しょっぴー頑張れ！！笑 (2019年1月25日 1時) (レス) id: e09021bb44 (このIDを非表示/違反報告)
とみちゃん(プロフ) - あなたの紡ぐ文章が読めて嬉しいです、応援してます。 (2019年1月25日 1時) (レス) id: df9c0b9860 (このIDを非表示/違反報告)
慧(プロフ) - 最近は更新が毎日あって寝る前の楽しみになっています！無理せず頑張ってください！本当に文章やストーリーがお上手で感動します（；＿；） (2019年1月24日 1時) (レス) id: 32bd2067cf (このIDを非表示/違反報告)
にゃんこけし(プロフ) - 阿部担だけど、なべがものすごく気になってしまいます…(笑) 物語もいよいよ佳境ですが、メンバー目線もっと読みたいです♪ 更新無理せず頑張って下さい(*´∀｀*) (2019年1月23日 17時) (携帯から) (レス) id: b63c0386f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おかゆ
| 作成日時：2018年12月18日 4時
