夏祭り ページ47
赤に緑に青に黄色。遠くの空で花火が上がる。
あたしと照の間には、やっぱり30センチくらいのスキマがある。
この30センチは、たったの一瞬でなくなる30センチ。だけど、それで全てを失うかもしれない、30センチ。
あたしと照を隔てているけど、同時に守ってもいる、厄介な30センチメートル。
照は緊張しているようだったけれど、落ち着いていた。
そしてあたしも。
こんな状況だというのに、凪いで穏やかな気持ちのまま、しばらく黙って花火を見つめていた。
岩「……こっちの駅着いた時、ふっかに、"今日はAと2人きりでいさせて"って、メールした」
穏やかな沈黙を破って照が口を開いたのは、もうそろそろ花火も終わるかなというころだった。
それは突然すぎて。
あたしは照の方を見れなかった。
岩「最初はもちろんみんなと合流するつもりだった。だけど、駅で待ち合わせた時、俺を待ってるAを見て……俺、今日Aを独り占めしたいって思っちゃって。気づいたら、こうしてた」
ずっと前を向いていたはずの照が、あたしの方を向くのが、気配でわかった。
照の言っていることを、耳が、脳が、ゆっくりと理解していく。
同時に心臓が、着々と心拍数を上げていく。
なんでかわからないけれど、泣きそうだ。
嬉しいのか悲しいのか苦しいのかもどかしいのか。
心が虹色に塗りつぶされて、なにもわからない。
岩「……A、」
照のほうを向かなくちゃいけないんだと、まるで他人事のように思う。
あたしの体はガチガチに固まって、ビクともしなかった。
照の表情は伺えない。
岩「俺、今日、間違ったことしたと思ってない」
あたしは、照が求めている答えを、ちゃんとわかってる。
わかってるけど、それを言葉にすることが正しいのかどうかは、わからない。
間違えたくて。
間違えたくなくて。
そもそもなにが正解なのかわからない。
照、あたし、心がゴチャゴチャになりすぎて、なにもわからないよ。
岩「………今更かもしれないけど、浴衣似合ってる。Aが、世界で一番可愛いよ」
喉がしまる。
呼吸の仕方を忘れたみたいに。
「……………………大げさだよぉ」
やっとの思いで絞り出した声は、照の求めていたものなんかじゃないこと、知ってるけど。
今のあたしにはこれが限界だよ。
岩「……俺は本当のことしか言わないよ」
照はまっすぐで、優しくて、大きくて、眩しくて。
もういっそ死んでしまいたいくらい、苦しい。
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すずの(プロフ) - しょっぴーしんどみが深いです！ (2019年5月5日 2時) (
レス) id: 0281d1cc7e (このIDを非表示/違反報告)
もやし(プロフ) - 改めて最初から読み直しました！！しょっぴーが切ない…。しょっぴー頑張れ！！笑 (2019年1月25日 1時) (レス) id: e09021bb44 (このIDを非表示/違反報告)
とみちゃん(プロフ) - あなたの紡ぐ文章が読めて嬉しいです、応援してます。 (2019年1月25日 1時) (レス) id: df9c0b9860 (このIDを非表示/違反報告)
慧(プロフ) - 最近は更新が毎日あって寝る前の楽しみになっています！無理せず頑張ってください！本当に文章やストーリーがお上手で感動します（；＿；） (2019年1月24日 1時) (レス) id: 32bd2067cf (このIDを非表示/違反報告)
にゃんこけし(プロフ) - 阿部担だけど、なべがものすごく気になってしまいます…(笑) 物語もいよいよ佳境ですが、メンバー目線もっと読みたいです♪ 更新無理せず頑張って下さい(*´∀｀*) (2019年1月23日 17時) (携帯から) (レス) id: b63c0386f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おかゆ
| 作成日時：2018年12月18日 4時
