第99話 心配 ページ4
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『ご迷惑をおかけして、本当にすみませんでした』
深々と頭を下げれば、上からは軽快な笑い声が聞こえる。この場面に似合わない様子に恐る恐る顔を上げる。
「Aに何もなきゃ、それだけでいいんだよ。
いつもAばっかりに頼ってる女たちも、
これに懲りて、少しは自分でやるようになるだろ? 」
迷惑をかけたのに、女将さんは私を咎めない。
無断欠勤したのに理由も聞かず、むしろ心配してくれる。すると、後ろから猛スピードで現れたのは、
「Aのバカ! 心配させないでよ! 」
雅だった。彼女の方が安静にしてなきゃいけないのに、お構いなしに私を精一杯の力で抱きしめる。
『雅も、ごめんね。体は大丈夫? 』
「とっくに退院してるっつーの! 」
怒ったように頬を引っ張ってくるけど、顔は涙でいっぱいだ。そんな雅の怒ったり、泣いたり、くるくる変わる表情につい笑みが溢れる。
「明日には退院できるんだろ?
しばらくは休みな。店のことは心配しないで」
そう言ってくれた女将さんの言葉に素直に頷くが、夢でみた二人がふいに頭をよぎる。
違う、これが現実で、あれは夢。
言い聞かせ深く息をついた時だ。
「A姉‼︎ 」
「A」
勢いよく晴太くんが病室に飛び込んでくる。
鼻水を垂らしながら、私の腰に抱きついた。
その後ろからは車椅子に乗った日輪さんと、それを押す月詠さん。
「ゆっくり休みなよ」
「じゃあね、A」
気を遣ってくれた女将さんと雅が部屋を出る。小さく振った手をそのまま晴太くんの頭に乗せた。
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月夜の光(プロフ) - SARAさん» コメントありがとうございます!遅くなり申し訳ありません!読んでくれて嬉しいです!カメ更新ですが、よろしくお願いします! (1月8日 20時) (レス) id: 26850a1960 (このIDを非表示/違反報告)
月夜の光(プロフ) - 寝子/猫さん» コメントありがとうございます!!遅くなり申し訳ありません!うぶな神威くんの行き着く先を一緒に見守ってください! (1月8日 20時) (レス) id: 26850a1960 (このIDを非表示/違反報告)
SARA(プロフ) - 1日で読み終わっちゃいました!大好きです♡更新またあるといいなあ… (10月1日 16時) (レス) @page5 id: 000b3a28d3 (このIDを非表示/違反報告)
寝子/猫 - 恋にうぶなかむいくん尊い (8月26日 1時) (レス) @page5 id: a46c77cf46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月夜の光 | 作成日時:2023年8月6日 14時