第98話 大事なもの ページ3
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「……俺にもよくわかんねーよ。ただ、」
歯切れも悪く言葉を止める。今日、何度目か分からない深いため息をつくと、確信したように口を開いた。
「アイツも、大事ものを守る為に戦ってるってことは確かだ」
その “大事なもの” というのはおそらく彼女のことだろう。
旦那に好かれ、あのイカれた野郎に好かれ、Aちゃんも大変だなと
「じゃ、サンキュー。沖田くん」
旦那はヒラヒラと手を振り去っていく。
感謝なんざらしくもない、台詞を言うもんだと思った。
いや、そもそも俺に頭を下げてまで調査依頼をするなんざ、旦那らしくもねェ。
旦那が頭下げるのは、自販機の下の小銭を探す時ぐらいしかないと思ってましたからねィ。
闇夜に消える、小さくなる旦那の背中を眺める。
なんで、旦那も
「……大事だから、ってことですかィ」
その腕を伸ばして、掴んで自分の元へ引き寄せればいいのに、それをあえてしない。
彼女が大切だから、
彼女の望むようにしたいってことなのか。
自分の幸せよりも、相手の幸せを望むなんざ、
旦那、アンタも幸せを掴むのが下手くそだ。
なんでこうも似るのかねェ……
「あんな得体の知れない奴に、Aちゃんを任せるくらいなら、旦那の方がよっぽどマシだと思うけどねィ」
そんな呟きを旦那は知る事もなく、吉原の空に消えて行った。
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月夜の光(プロフ) - SARAさん» コメントありがとうございます!遅くなり申し訳ありません!読んでくれて嬉しいです!カメ更新ですが、よろしくお願いします! (1月8日 20時) (レス) id: 26850a1960 (このIDを非表示/違反報告)
月夜の光(プロフ) - 寝子/猫さん» コメントありがとうございます!!遅くなり申し訳ありません!うぶな神威くんの行き着く先を一緒に見守ってください! (1月8日 20時) (レス) id: 26850a1960 (このIDを非表示/違反報告)
SARA(プロフ) - 1日で読み終わっちゃいました!大好きです♡更新またあるといいなあ… (10月1日 16時) (レス) @page5 id: 000b3a28d3 (このIDを非表示/違反報告)
寝子/猫 - 恋にうぶなかむいくん尊い (8月26日 1時) (レス) @page5 id: a46c77cf46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月夜の光 | 作成日時:2023年8月6日 14時