第43話 これは序の口 ページ44
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「いや〜でも良かったね。事件の犯人捕まって」
「ええ。路地裏に足を怪我して倒れてた所を通報されたらしいよ」
クルリとあたりを見渡せば、斜め向かいの席で年配の店員さんとお客さんがお喋りをしてるのが目に止まる。団子を食べるのに夢中なふりをしながら、耳だけはその話に傾ける。
あの事件の犯人捕まったから、お店再開してたんだ…
みんなで写真を見てた日を思い出す。違和感の正体が分かったのは銀時さんたちが帰った後。きっと誰も気がつかなかったこと。
団子屋の店員さんは髪の長さや、エプロンの姿などがひのやにいる私の仕事姿によく似ていた。
スーパーの店員さんは写真の中でかんざしをさしていた。
それは新八くんが褒めてくれた私の所有するかんざしと色は違えど、デザインは同じ。
その他の2人も、私が持っている着物やカバンと同じものを身につけていた。
偶然……?
でも神威さんの言う通り、狙われてたのが私だとしたら、全く無関係の4人に怪我をさせてしまった。何も悪くないのに、私のせいで……
「ねぇ、なに考え込んでるの? 」
口元にむにゅっと柔らかいものがあたる。食事に夢中な振りをしてたのはバレてたみたいで、神威さんは不満げに三色団子を私の唇に押しつけている。
『神威さん、これ最後の1本』
「Aって自分の食べる分も人にあげそうだよね」
そう言いながらグイグイ押しつけてくる。だから食べろって事なのかな…観念して小さく口を開けば、彼は満足げな顔をして竹串を自分の手から離した。
「でも、これはまだ序の口だ。次行くよ、A」
ついお茶を吹き出しそうになる。この人の胃袋はどうなってるんだろう。
神威さんはおもむろに立ち上がり、お会計をサラリと済ませる。慌てて追いかけて、自分の分を支払おうとするが、いらないと断られてしまった。
『神威さん、お願いだから受け取ってください』
「じゃあ次の店で、俺よりたくさんご飯を食べられたら受け取ってあげるよ」
『む、無理に決まってます』
なら、大人しくしろと笑顔で圧をかけられ、渋々財布の中にお金をしまう。
歳がひとつしか違わないのに、神威さんが大人に思える。常に冷静で落ち着いてて、どこか影があるような。
遠くなる背中を見つめていれば、傘をさした神威さんが振り返る。
「なにしてんの。置いてくよ」
そう言いながら、私が追いつくまで歩き出さない神威さんを優しい人だと思った。
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月夜の光(プロフ) - ありちゃんさん» コメントありがとうございます!!そう言ってもらえてすごく嬉しいです(;o;)もっと上手に表現できるように頑張ります!ありがとうございます! (2021年2月28日 15時) (レス) id: e8dd5af318 (このIDを非表示/違反報告)
ありちゃん(プロフ) - 月夜の光さんの神威が好きすぎて他の作品見れなくなりそうです!!キュンキュンします(^^)更新楽しみにしてます (2021年2月27日 20時) (レス) id: 15fe9d02c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月夜の光 | 作成日時:2021年1月2日 22時