第39話 無意識の感情 ページ40
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「頼まれたんだ、ある奴に。あの娘を連れてこいって! 」
「誰に」
「しらねぇ!」
金で雇われた奴か……
状況を瞬時に判断し、目の前のやつをどうするか神威は考えた。
「あと、知ってることは」
「ねぇよ! た、助けてくれ」
汗を流し、手も震えている。本当に何も知らないのだろう。有力な情報を得られないことにイラつく。いつも通りの自分であれば迷いなく男の息の根を止めた。
しかし、彼の頭に浮かんだのは、胸ぐらを掴まれ、自分を傷つけようとした相手にも関わらず、乱暴はやめてほしいと懇願してきたAの姿。
そんな小さな記憶にいつも通りの自分が支配されたことに驚く。
「……アイツに二度と近づくな」
だが、何もしないわけじゃない。刀を足に向けると一気に斬りつける。男は突然の痛みに声すら上げられず、ただ地面に転がる。恐ろしいものを見るように視線を神威に向けると、彼は微笑んだ。まるで傷をつけた相手を慰めるように。
「安心しなよ。すぐ治るくらいの傷さ。
まぁ、今は動けないだろうけど」
足を傷つけたのは自分が去った後、逆上した男がAに近づかないように。
いや、その前に誰かに見つかり、通報されるだろう。
刀を捨て、男を置き去りにして、近くの屋根に飛び乗る。探してる人物はすぐに見つかり、その場からじっと見守る。ちょうど先ほどの少年と別れるところだった。
「すぐに会えるって言ったろ」
少年には届いていないが、予想通りの展開につい言葉がもれる。
「あの侍……」
Aの横に視線を向ければ、見覚えある人物。鳳仙を倒した銀髪の侍だ。知り合いだったらしい。世間は狭いものだと思いながら、2人を眺める。
屋根の上にいる自分に気づいてはくれないか、なんて子どもじみたことを考えていれば、ふいにAがこちらを見た…のは勘違いで、雲の隙間から現れた月をみている。
何を考えているのだろう。しかし、銀髪の侍に声をかけられ、弾かれたように歩き出す。彼を見上げ、時々微笑んでいる。
「まぁ、今日はアンタに任せるよ。お侍さん」
あの侍がそばにいれば大丈夫だろうと思ったわけではない。2人の談笑してる姿をこれ以上見ていたくなかった。背を向けてこの場を立ち去る。
『あれ……』
「A? 」
『今、誰かいたような……』
やっぱり何でもないです。とAは誤魔化すように笑えば、銀時もつられて微笑んだ。
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月夜の光(プロフ) - ありちゃんさん» コメントありがとうございます!!そう言ってもらえてすごく嬉しいです(;o;)もっと上手に表現できるように頑張ります!ありがとうございます! (2021年2月28日 15時) (レス) id: e8dd5af318 (このIDを非表示/違反報告)
ありちゃん(プロフ) - 月夜の光さんの神威が好きすぎて他の作品見れなくなりそうです!!キュンキュンします(^^)更新楽しみにしてます (2021年2月27日 20時) (レス) id: 15fe9d02c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月夜の光 | 作成日時:2021年1月2日 22時