第14話 再会 ページ15
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背後で銀時さんが私を呼ぶ。
しかし、それに応えている余裕がなかった。
絶対見失ってはいけない
追いかけなきゃ
それだけが頭を支配する。
人通りもない、狭い路地裏。
懸命に追いかける人影が小脇に抱えているのは
紛れもなく、そよ姫様だ。
『あ、れ』
次の角を曲がった時、追いかけてた人影を見失う。
ドクドクと焦る心臓を押さえてさらに奥へと進む。
『姫様ー! 』
叫んだ時、硬いものが右肩をかすめる。
それは地面にあたると同時に呆気なく割れ、
その拍子に破片が足首に飛び散る。
わずかだが血が出てきた。
触ってそれは何かを確かめる。
瓦が落ちてきた。一気に恐怖が支配する。
あれが頭に当たったらひとたまりもない。
『ひっ! 』
急いで見上げると、人が屋根によじ登っていた。
私にめがけて、瓦を落としてくるのがわかる。
「ヴゥ……アア」
その人物がうめく。
人間なのか、天人なのかそれすら分からない。
待って、どうしよう
何も考えずに来てしまった
戦う術もない私に何ができる?
銀時さんの声を考えなしに振り払った事を
今さら後悔する。
『そ、そよ姫様を、返してください! 』
奥歯がカタカタ震えてるのがわかる。
しかし尻もちをついて、
腰が抜けた私が叫んでも説得力なんてない。
「グァァァ! 」
どうやら、余計に機嫌を損ねただけのようだ。
目の前に瓦が落ちてくるのが暗闇でもわかる。
反射的にキツく目をつぶり、腕で頭を隠すように身を小さくする。
「そんな小さくなって、どうしたんだい? 」
この状況に似合わない陽気な声。
顔をあげると
私を覗き込むようにして座り込むある人物。
『あ、なたは……』
「アンタ、いつも怯えた顔してるね」
いつの日かの青い瞳の男性。
手には大きな傘が握られている。雨も降っていないのに。
瓦はその傘が壁になり、
私の周りに音を立てて散乱していく。
男はおもむろに傘をとじると、その先を屋根に向ける。
ドンッと短く鈍い音。
もう、瓦が落ちてくることはなかった。
「どうしたの? 腰抜けちゃった? 」
くるりと私に向き直る男の目は、笑っていた。
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月夜の光(プロフ) - ありちゃんさん» コメントありがとうございます!!そう言ってもらえてすごく嬉しいです(;o;)もっと上手に表現できるように頑張ります!ありがとうございます! (2021年2月28日 15時) (レス) id: e8dd5af318 (このIDを非表示/違反報告)
ありちゃん(プロフ) - 月夜の光さんの神威が好きすぎて他の作品見れなくなりそうです!!キュンキュンします(^^)更新楽しみにしてます (2021年2月27日 20時) (レス) id: 15fe9d02c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月夜の光 | 作成日時:2021年1月2日 22時