第35話 迷子 ページ36
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『お疲れ様でした』
「A、今日もありがとうね」
日輪さんと晴太くんに手を振り、ひのやを後にする。夏の暑さも終わりに近づき、日が暮れるのも早くなる。昼間の雨で地面は少しぬかるんでいた。
「A」
『……銀時さん? 』
銀時さんはお店の壁によりかかり、小さく手をあげる。昼間に別れた彼がなぜここにいるのだろうか。
よいしょとかけ声をあげ、お尻についた砂をトントンとはらった。
『いつから、なんで……ここに? 』
「看板娘を迎えにな」
行くぞ、と言われ、わざわざ私を送る為に戻ってきてくれたのだと申し訳ない気持ちになる。
『銀時さん、あの私1人でも大丈夫ですよ……? 』
「俺が勝手にしてることだから、気にすんな」
目を細めて微笑む銀時さんにそれ以上何も言えなくなる。どうして私の周りは優しい人ばかりなのか。小さくお礼を言えば返事の代わりに頭を撫でられた。
その時だ。トンッと膝の辺りに何かが当たる。後ろを振り返り確認すれば、小さな男の子がいた。大きな瞳は涙が溢れて、今にも泣き出しそう。
『どうしたの? 』
「ママぁ」
膝を折り、声をかけると同じタイミングで小さくその子は呟いた。まま? もしかして迷子かな。銀時さんを見上げれば眠そうな瞳と目が合う。
『迷子ですかね』
「みたいだな。おい、オマエ名前は? 」
「うわぁぁぁん」
銀時さんが急に顔を近づけると男の子は怯えるように泣き出した。私の背後に隠れる。着物をギュッと掴み銀時さんを大きな瞳で怖がりながら睨みつけた。
『この人怖くないから大丈夫だよ』
そう言っても聞く耳を持たない。銀時さんに困った笑みを浮かべれば、本人は拒否られたことに青筋を立てている。
「ったく、最近のガキは。人の親切を何だと思ってやがる。親の顔がみたいもんだ」
『でも警戒心が強いことは良いことですよ。しかもこの吉原では特に。安全な街とはまだ言い難いですから』
銀時さんはため息をつくと、今日は探してばっかりだなと愚痴をこぼしながら、私の背後にいる男の子に手を伸ばし、肩車する。
「こうした方がママ見つけやすいだろ。痛ッ! お前俺の貴重な天パをちぎるな! 」
警戒心剥き出しだったが、ふわふわの銀時さんの髪を新しい遊び道具だと思ったみたい。ニコニコと笑ってちぎろうとしている。
「まっすぐ帰るはずだったのにな」
『いえ、この子をお母さんと会わせてあげましょう』
思わぬ人探しが始まった。
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月夜の光(プロフ) - ありちゃんさん» コメントありがとうございます!!そう言ってもらえてすごく嬉しいです(;o;)もっと上手に表現できるように頑張ります!ありがとうございます! (2021年2月28日 15時) (レス) id: e8dd5af318 (このIDを非表示/違反報告)
ありちゃん(プロフ) - 月夜の光さんの神威が好きすぎて他の作品見れなくなりそうです!!キュンキュンします(^^)更新楽しみにしてます (2021年2月27日 20時) (レス) id: 15fe9d02c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月夜の光 | 作成日時:2021年1月2日 22時