03 / witch ページ3
side.nk
この異様な空気に唯一似合うのは、
氷のように冷たい翔と抜け殻のような俺。
誰にもこの空気は作れない、俺たちだけのもの。
でもこの空気にもいつかは限界がくる。
「しょ、翔…」
「んぁ？」
「もぅ…やめて」
翔に蹴られて、殴られてって好きだけど。
もう体力的に限界がきていた。
そしてSTOPをかけるのはいつも俺だ。
翔は痛みが分からないから。
「分かった。…おいで？」
「うん」
そして俺がSTOPをかけると必ず優しい“翔ちゃん”に戻る。
ハグして、俺の殴り蹴りされて痛い所を優しく撫でながら「ごめんね」って言ってくる。
俺だって初めはどうしたのかと思ったし怖かった。
急に殴られて蹴られて、見たことない翔になって。
普通なら逃げるはずなのになぜかそれを求めてしまう自分がいて。
そんな日々がもう…何年目なんだろう。
「ごめんね、毎回毎回。痛いよね？辛いよね？」
「翔ちゃん、大丈夫だから。翔の方が辛いんだもんね、知ってる」
「ごめんね。本当に…」
そう言うと俺を強く抱き締める。
さっきとはうって変わって温もりを感じる。
翔の絞り出したような声とともに、温もりも増していく。
その温もりとともに俺の翔への愛も増していく。
「翔」
「んっ？」
「大好き」
「ありがとう」
笑顔のような可愛らしく、どこか儚い顔を俺に見せると口付けを交わす。
そこから時間はあまりかからずに優しく裸のままのお互いを愛し合う。
その時、翔に服を脱がされた時に見えた俺の痣を見て、翔は頭を抱えていた。
でも声はかけない。
理由は明白。
翔は気づいてないと思うけどね。
俺、翔ちゃんの症状知ってるよ？
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作者名：朝顔 | 作成日時：2019年7月8日 16時
