【d!】星空を観に行こう (ページ18)

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気分屋の気まぐれ / kn ページ18

kn視点

『お前って気分屋やんな』

あいつらは、今日もそう言ってくる。
まぁ、いつも一緒に話しながら帰ってるやつが、急にそれをパタリと止めて学校図書館通いを始めたんや。そう思ってもしゃあないんかもしれん。
…けど、ほんまにそうなんやろうか。

ぽつぽつと産まれる小言を飲み込みながら図書室に向かう道を、上靴の音で五月蠅い蝉の声をかき消すようにして歩く。

そんな__________高校三年生、夏。

…華の高校生として味わえる最後の夏休みを目前として、遊びの計画やら恋愛の悩みについてで皆がわいわい騒ぐこの時期。中学最後の夏は俺もそうやって皆と騒いでたし、きっと今年もそうなんやろうと思ってた。
せやのに、未だに何故か俺はその波に乗り切れていない。

それも、気分屋な俺のきまぐれのせいなんやろか？

…いや、ちゃうな。絶対に違う。

見てろよお前ら。俺がお前らが笑って言ってくるみたいな気分屋でも、はたまた急にきまぐれ起こすような奴でもないっての、見せたるからな。

頭の中で友人たちに勝った気になりながら図書館の扉を開いて、俺はいつもの姿を探した。

…あ、おった。

「…おい、A。なんや、また星の本読んでんのか？」

「うん。だって面白いんやもん。…ってか、そんなこと言って。また話聞きに来てくれたんじゃないん？」

「そりゃあもちろん。」

俺の欲しいもん。
そう。今たまらなく欲しいもんは、この先友達とたてる休み予定にも、おしゃべりの中にもおらん。こうやってここにきて初めて見れて、話せるもんやねん。

…悪いけど俺、努力家で一途な男やから。

しばらくこの特等席を空けるつもりはないねん。