【d!】星空を観に行こう (ページ16)

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目を開けると満天の星空。何故か夢だというのは分かっていて、夢の中で目を覚ますという変な感覚に首を傾げながら宛もなく歩いた。

『大先生っ！』
｢へっ、A…ちゃん？｣
『そーですよ？どうかしました？』

俺一人だと思っていた夢の空間にはもう一人居たらしい。けど、申し訳ないんやけど違和感しか感じないねん…Aちゃんが表情豊かやと。

｢いや、なんでもないで。｣
『良かった！私、大先生が来るの待ってたんですよ！ほら、星見ましょうよ！凄くないですか？』

満面の笑みでバッと腕を広げたAちゃん。こんな表情見れんのも夢の中だけなんやろなぁ。
俺の願望が見せたただの幻。そういってしまえば簡単なもんやけど、今日くらいは。

｢せやな。見よか。｣
『やった！一人で見るのにも飽きてきてたんです。大先生が来てくれて良かった。』
｢嬉しいこと言ってくれるなぁ。｣

幻だとしても、俺を待っていてくれた事が嬉しかった。多少わかるとは言っても、想いは一方通行やと思ってたし。

『ほんとですよ！私、嘘は言いませんから！』
｢疑っとらんよ。嬉しいって思っただけや。｣
『…ならいいですけど！』

話に一段落がついて星を見上げようとした時、地面が揺らぐのを感じた。

『え…もう朝？』
｢なんなんこれ！｣
『起きる時間が来たんですよ…折角大先生が来てくれたのに。』
｢なるほどなぁ。ま、また会えるやろ。｣
『ほんとですか…？』
｢僕も君に嘘は言わんで？｣
『ふふっ、ありがとう、ございます。ではまた！』
｢またな。｣

意識は地面に吸い込まれるように消えていき、次に聞こえたのはけたたましく鳴る目覚ましの音。
今日もパン屋、行ってみるか。

『いらっしゃいませ。』
｢Aちゃん昨日ぶり。元気やった？｣
『はい、元気と言われれば、そうですね。』

そこに居たのは相も変わらず無表情の彼女。やっぱりあの夢は俺の妄想やったんかな。と独りごちる。

結局、今日も彼女の無表情は崩れることは無く帰る時間。いつか現実でもあんな笑顔が見れる日は来るんやろか。

『もう、帰るお時間ですか。』
｢すまんなぁ。｣
『いえ、予定を狂わせる訳にはいきませんから。では、また。』
｢ん、またね。｣

店を出ると瞬く星々が目に入った。夢の中の星の方が強い光を放っていた気がしたが、こちらの世界の星も悪くは無い、なんてポエムのような事を考えて家路に着く。
風呂を済ませて煙草を1本。それだけやって睡魔に襲われた俺は布団の中へ倒れ込んだ。