【d!】星空を観に行こう (ページ12)

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投影が終わり、現実に引き戻された。まだふわふわした心地だ。眠っていたわけではないのに、かなりリラックスしていた。

物販コーナーには12星座関連の本も置いてある。

〔12星座の本質を解き明かすキーワード〕

そんなものまであるらしい。星座占いは毎朝テレビで見る程度の知識だ。

でもこれが、読んでみると地味に楽しい。

最後から3つ目、山羊座の項目に目が留まった。

「I endure……私は耐える……」

あの暗い逆三角形。目立たない星。我慢強く耐えているのだと思うと涙ぐましい。

私も日々耐えてきた。なんかちょっと親近感湧くよ山羊座。私も目立たない部類だったし。

だめだ、せっかくの休日。癒されに来たはずなのにネガティブが止まらない。

併設された科学館からは子どものはしゃぎ声が聞こえてくる。
この後の予定もないし、少しだけ見ていこう。そう考えて本を閉じ、あまり人気のなさそうなパネル展示を眺めた。

「今日はお一人なんですね」
「……へっ？」

後ろからそう声がする。振り向くと小柄な男性スタッフが立っていた。視線の先に私しかいない。
まさか自分が声を掛けられるとは思っておらず、間抜けな声が出た。慌てて取り繕うように返事をする。

「そ、そうです」

今日は、ということは、私がここに何度も来ていることを知っているらしい。そんな通ってたか。常連扱いか。ちょっと恥ずかしい。
そしてこの男性、……聞き覚えのある声に似ている。

「もしかして、さっきプラネタリウムの解説してた方……？」
「あ、そうです。いつもありがとうございます」
「いえ、こちらこそ……」

解説の時とは違う、関西弁っぽいイントネーション。声も自然な感じがする。

「星、……好きなんですか」
「まぁ、はい」

好きじゃないと何度もプラネタリウムに通ったりしない。

「そうなんや。」
「……」
「……」

沈黙。なのに男性はどこかへ行くこともしない。なんだ、まだ何かあるのか。

「えーと、天田さん？今日の解説すごく素敵でした」

気まずすぎて私から話を振ってしまう。彼は驚いたように目を瞬かせた。

「え、俺の名前」
「いや名札付いてるじゃないですか」
「あ、ほんまや」

恥ずかしそうに笑う天田さんに少し癒された。
仕事が絡まない会話久々だな。そう考えると私の人生めちゃくちゃ虚しい。人生に色がない。まじで何もない。

「また来てください、……待ってます」

こんな営業スマイルを受けただけで、また来ようと思うくらいには。