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少し色褪せたその羽織はどこかで見た記憶がある気がした。
夜は暗くて気が付かなかったが絶対に見た事がある。
どこだ。
暫く記憶を遡ると昔今回の村の近くの山で助けた少女に似ている事に気がついた。
この羽織。
顔。
ここまで筋肉はついていなく以前はもっと細身の少女だった気がするが
あの時の憎悪に満ち溢れた少女そっくりだ。
｢…………なあ、胡蝶聞いてくれよ。
………こいつ昔俺が助けた少女に似てるんだ。
それこそ村では血だらけで暗くてよく分からなかったけどその羽織とこの顔に見覚えがある｣
｢……………！
…もしAさんが本当に昔あなたに助けられた人だったのなら、Aさんは運がいいですね｣
2回も同じやつを助ける事があるのか。
それこそ運命というやつなのではないのか。
沢山の人を助けてきて申し訳ないが全員の出会いを覚えている訳では無い。
しかしこの隊員に似た少女の時の記憶は鮮明に残っている。
…………俺が後悔しているから。
昔彼女に言った言葉をずっと後悔していた。
｢……俺、昔助けたこいつに似てるやつにこう言ったんだ。
『お前が死んだら誰が鬼を殺すんだ。家族の仇を打てないぞ。家族の死を無駄にするな』
って。それで本当に鬼殺隊に入っちまって早く命を落としてしまったら。
所帯を持って幸せに暮らせる道がまだ少なからず残っていたんだ。
俺が変な事言わなければ鬼殺隊の存在を知ることなく幸せに暮らせたかもしれないのに。｣
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作者名：もね | 作成日時：2021年1月23日 22時
