ある日のお出掛け(前編)4 ページ27
「有志……」
俺は意識的に上目遣いをして、自分に覆いかぶさる彼の名前を甘く呼んだ。
彼女が愛しい彼氏を呼ぶように。
これがめっちゃくちゃ何故か効果絶大で。
「千紘……」
彼は俺を愛おしそうに見つめて、いつもより低い声で俺の名前を呼んだ。
こうなるとこっちのもんや。
俺は心の中でほくそ笑んだ。
「明日のタピオカ楽しみやな〜♪
有志…奢って……?」
畳み掛けるように彼に、強い視線を送り
とびっきり甘い声で、彼の耳元で囁いた。
すると彼は
「仕方ないなあ。千紘だけ、"特別"やで」
そう言って優しく微笑んだ。
でた、"特別"!!
これはもう俺の勝ちやな。
タピオカの奢ってもらえる権利を得た俺は
今度はニヤリと顔に出して笑い
「有志、明日絶対奢れよ」
と先程とは全く違う通常のトーンで、彼に言った。
すると、彼の顔がみるみるうちに歪んで
「またっ…やらかしてしもたあああああ」
と言って、俺の隣にばったりと寝転んで
悔しそうに暴れていた。
有志の馬鹿力から解放された俺は
ふんふん♪と上機嫌で鼻歌を歌って
悔しがる彼を横目にタピオカ調査を始めたのだった。
しばらくバタバタと暴れていた有志は
まだ悔しさが抜けないらしく
タピオカ調査をする俺の写真を撮ったり
俺の頬をツンツンしてちょっかいをかけたり
スマホをいじる俺の手をグラグラ揺らしたり
とりあえずめちゃくちゃ邪魔をしてきた。
その結果、俺がムキになって彼に反撃をしたところ
なんだかんだで盛り上がって疲れて
いつのまにか寝てしまったのだった。
257人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:天然水。 | 作成日時:2019年11月24日 22時