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「心臓、か」



ポツリと呟いた言葉にAが「んー?」と反応をする。

なんでもない、と言いながら俺は高校生の頃の思い出をまた振り返る。


あの時、必死になって止めようとした相手が今自分の横にいる。
それが堪らなく幸せで、思わず笑みがこぼれた。




「1人で笑いだした………こわ」


「黙れ」




俺の言葉にクスクスと笑った。

そしてそのまま「ねぇ」とスマホの画面を見ながら、俺に声をかける。




「これって、あの時のことイメージしたりした?」




そうして見せてきた画面はYouTube。

そこのタイトルを見て「あー」という声が思わず出た。




「しかし相変わらずいい声してんね、うらたぬきサン」


「………それはどうも」


「あ、照れた」


「…………てか俺の歌聴くのやめてくんね?恥ずかしいんだけど」


「えーいいじゃん。彼氏の歌聴いて何悪いのさ」




ケラケラと面白そうに笑うから、彼女は不思議だ。

彼女の笑顔はなぜだか心が落ちつく。




「………誰かの心臓になれてるよ、うらたは」


「え?」


「こたぬきちゃん、うらたの声聞いて救われてる子何人もいるよ?良いことすんじゃん」




そう言って見せられたのは、その動画のコメント欄。

『うらたさんが生きる理由です』
『こたぬきの心臓になれてますよ』

そんな言葉を見て、思わず心臓が揺れた。



「『うらたさんと出会えて良かったです』だって。愛されてるね〜うらた」


「……本当だ」


「えっ視聴回数100万超えてるの!?すご!」




ぎゃーぎゃー騒ぎながら何故かその動画を再生し始めて「おい」と声をかけるがどうやら止める気は無いようだった。

仕方なくスマホから流れる、その曲を聞く。




「俺も、誰かの心臓になれてるのかな」


「なれてるよ。あんなにコメント書かれてるの見たじゃん」


「なんか実感湧かねえんだよな」


「そっか」




Aはふわりと微笑んでこちらを見る。
その目があまりにも優しくて、目を逸らせなくなってしまって。




「あの時、言ってくれた言葉忘れたことないよ」


「あの時?」


「私がいない世界なんて意味が無いんだもんね?」




あの時は勢いで言ってしまった言葉を改めて言われると恥ずかしくなってしまう。

そんな様子を見て少し笑ってからAはあの時の俺のように、俺の頭をゆるりと撫でた。




「私も、うらたがいない世界なんて意味が無いよ」


「っ、」


「うらたは、私の心臓だよ」




その言葉を聞いて、改めて思う。


やっぱり君は、俺の心臓だ。





fin.

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作者名:作者一同 | 作者ホームページ:***  
作成日時:2020年1月1日 23時

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