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ページ25

視界にはなるせの顔がいっぱいに映り、その後ろには天井が見えた。

背中にはカーペットの感触があり、なるせに押し倒されたことに気づくのは遅くなかった。

何故こうなったのか考えてみるもさっぱり分からず、頭を悩ませる。

すると、なるせの顔が近づいてくる。

「近い近い近い」

「ねえ、A?」

右耳に顔を寄せてきて、いつもより幾分か低い声で名前を呼ばれる。吐息が耳にかかり、反射的に顔を逸らす。

「歌い手の俺を見るのもいいけどさ、俺のことも見てよ」

さっきとは打って変わって寂しそうな声でそう言われ、逸らした顔をゆっくり戻す。

右耳から離れたなるせを見れば瞳が揺れていて、髪で影がかかった顔は少し赤くなっていた。

「えっ、と…」

「俺ってそんなにAにとってちっぽけな存在なの?歌い手の俺の方が好き?俺、Aが喜ぶ顔を見るのは好きだけど、ずっと歌い手のnqrseばかり見てるのは嫌だ」

「俺のことも見て」

床に縫い付けられた手を絡め取られながら、私から目線を逸らさずそう言われる。

今まで見たことの無いなるせに、心臓が激しく脈打つのが分かった。

「それはつまり…嫉妬、という解釈でよろし…?」

うるさい心臓を無理やり落ち着かせながら、なるせにそう問う。瞬間、なるせは顔を更に真っ赤にさせた。

絡められた手を離され、今度は体をぐるんと横にさせられ抱きしめられる。

「あーそうだよ!悪いかよ!だってA構ってくんねーんだもん!あんなに声掛けたのにさ〜!?」

「ちょ、顔見えない」

開き直ったのか、ベラベラと喋り出すなるせ。後頭部を押さえられ胸にグッと引き寄せられているため、顔を見ることが出来ない。

「聞いてなるせ。あ、やっと顔見れた。真っ赤だね〜かわいい」

「うっせ…」

からかうと面白いくらい静かになり、私が話し出すのを待っていた。

「私にとってなるせの存在はまるで世界そのもの。もちろん歌い手のnqrseも好きだけど、それ含めて、今目の前にいるなるせのことが大好き」

「なるせがいなきゃ_なるせと出会ってなかったら、こんなに世界を色鮮やかに見れなかった」

そう伝え終えると、なるせの頬に横髪がかかっているのに気づき、それを片手で掬って耳にかける。

その手になるせが手を重ねてきて、ギュッと握られる。そして、笑みを零しながら口を開く。

「ずっと見てなきゃ許さないから」

「じゃあ、もっと色んななるせを見せてね」

私の世界を、あなたで満たしてほしいから__

fin.

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作者名:作者一同 | 作者ホームページ:***  
作成日時:2020年1月1日 23時

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