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「わぁ……!綺麗……!」
「そう、だな。」
たどり着いたそこは、自然があふれている場所だった。
一面に花が咲き、湖は日の光を浴びて輝いている。
心地よい風が吹き、まるでこの世の物とは思えない美しさで俺達を出迎えてくれる。
「前に、本で読んで…ずっと……着たかったの。」
「あぁ。」
「世界が……人間が皆死んじゃうんだよね……」
「……あぁ。」
ぽろぽろと、涙を流してしゃがみこむ彼女。
そう、ここまできたらどんなことをしても、人間は滅んでしまう。
いろいろな手段を試してきた、それでも結末は同じだったんだ。
そして俺は、何度となく言えないままの言葉を、また言えずに終わるんだ。
ずるいことに、彼女からその言葉を引き出して。
Aだけからその言葉を聴いて。そしてまたバッドエンド。
「ねぇ、なんでうらたは一緒に来てくれたの…?」
「なんでって……お前独りにしておけねぇだろ。」
「……そっか。」
沈黙が、静寂が、俺達を包み込んで支配した。
心地いいような、気まずいような。
これからを、この後を知っている俺は………
今までのように、後ろから彼女を抱きしめた。
「うらた…?」
「なんで、こうなっちゃったんだろうな。」
「うん……」
俺らがいるところは、こんなにものどかで。
今日で世界が終わるだなんて、思えないくらいで。
時計を見ると、本来は暗くなってる時間なのに
こんなにも明るいのが、まばゆいのが終わりが近づいている証だなんて。
止まったままの懐中時計。
ポケットから取り出したスマホの時間は、その時間に近づこうとしている。
そう、そろそろ………
「終わっちゃうんだな。」
「そう……だね。………ねぇ、うらた。」
「ん……?」
振り向いたAの顔が目の前に、彼女とのキスはいつも涙の味がした。
表情は笑顔のまま、少し震えてる体を精一杯なだめるように強く抱きしめていた。
世界が終わるまで、あと………1分。
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