脆い関係 fkr ページ30
「学生に戻りたいよぉ」
ハイボールを二杯目飲み干して、三杯目を注文した。
10代の頃はダイエットとは無縁だったのに、アサラーになってからは気をつけないとあっという間にスカートがきつくなる。
甘いお酒は太るから最近はめっきりハイボールか焼酎だ。
「まぁ、若さって無敵だしねぇ」
ふにゃりと笑ったこの男も私と同い年のはずなのに、体型なんて気にすることなく唐揚げを頬張り、ビールを飲む。
神様は不公平だ。
いつも愚痴を聞いてくれる福良と私は時々こうして二人で飲む。
ガヤガヤ煩い居酒屋で、そういえば彼氏出来たんだよねって何となく報告したら空気が一瞬凍った。
「そう、なんだ」
少し困惑したような福良の表情。
いつもなら気にならないことがやけに気になる。
「何その顔。私に彼氏が出来て寂しいの?」
深い意味なんてなかった。
もうずっと友達でいた私たちだから、ちょっとからかってみただけ。
それだけだったのに。
「……はは」
今日に限って、福良が顔をしかめた瞬間を見逃せなかった。
鼓動がどんどん大きくなっていって、それを誤魔化すようにアルコールを流し込む。
曖昧に笑った福良になんだか腹が立った。
どうして笑い飛ばしてくれないの。
寂しいわけないじゃんって、そう言ってよ、と責めたくなる。
「福良さ」
「うん」
「私のこと好きだった、とか?」
なんてふざけて聞けば、福良は――――
「……そんなわけ、」
消えてしまいそうなほど細い声と強張った笑顔。
そんなの肯定してるのと同義じゃないか。
あぁ、私はいつも気付くのが遅いんだ。
もう少し早く福良の気持ちに気づけていれば、今の私達の関係も違ったのかな。
「そうだよね!そんなわけないよね」
代わりに笑い飛ばした私に、福良は複雑そうに笑ったけれど知らないふりをする。
だってもうそうしなきゃ私達は友達でさえなくなってしまうから。
男女の友情ってこんなにも脆くて、それを壊すことすら出来ない私達は苦し紛れに友達でいるしかない。
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作者名:ももりん | 作成日時:2020年5月30日 18時