空白 ko-chan ページ29
「__さん結婚するんだって」
「へぇ」
日曜日の昼下り、私たちは素肌のままでベッドの中にいる。
マウントの取り合いと自慢するためだけのSNSはさながら戦場だ。
高校の同級生だった上っ面の友達の投稿にいいねを押して、そういえば私たちももうアラサーと言われる年齢なのかと妙な気分になる。
航平はなんかよくわからないゲームに夢中で、相変わらずだなって少し羨ましい。
男だからなのか、航平だからなのか。
「航平って結婚願望あるの?」
「あるよ。多分強いほうだと思う」
「……へぇ」
高校生の頃から私たちはそれだけの関係。
10代の有り余る欲望と、やたらと大きな好奇心、それとたまたま良かったタイミング。
会ったり会わなかったりを繰り返しながらも、未だに繋がっているのは相性がいいからとかじゃなくて恐らくお互いに都合がいいから。
何度もまぐわってきたから勝手を知っているし、正直もう誰かと初めから関係を築くのは面倒くさい。
「Aは?」
「うーん。まぁ、でも子供欲しいしって思うとそろそろだよねって思うかなぁ」
ぼんやりとした人生設計に自分でも呆れてしまうけど、世の女性たちはきちんと考えているものなのだろうか。
「じゃあAとこうしてられるのもあと少しなのかなぁ」
航平はスマホをおいて、名残惜しそうに私にくっつく。
これだけ身体を重ねて、それなりに思い出もあって。
好きだなんて言ったこともないし、言われたこともないけれど。
「そうかもね」と言って航平の頭を撫でたけど、彼は何も言わなくてなぜだか急に泣きたくなった。
私たちの6年って何か意味はあったのかな。
まぁ、どうでもいいんだけどさ。
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作者名:ももりん | 作成日時:2020年5月30日 18時