検索窓
今日:2 hit、昨日:4 hit、合計:60,622 hit

三十一章 ページ31

「乱歩さん、本当によかったのかい?」

与謝野女医の問いかけに、乱歩は首を傾げる。
「何が?」
「あの子を一人で行かせた事だよ。妾らだって行けなくはないだろう?」
「いいんだよ」
乱歩は確信めいた声で云う。
「これは夏君が、自分の力で解決すべき問題だから。川海女医の心を動かせるのはー夏君だけなんだよ」


せっかく鈴があるんだから、姿を現して「川海咲子女医はどこにいますか?知りませんか?」って訊いて回りたいところだけど………。
変に噂になっても困るしなぁ。
否、いっそ噂になって、お母様の耳にも届いてしまった方が手っ取り早いかも?

などと考えているうちに、下の景色は全く違うものになっていた。
綺麗な桜が咲き誇っていて、街の人達がお花見をしている。
「綺麗だな………」
思わず呟いた後、目を見張る。
決して桜が綺麗だったからではない。見つけたからだ。探していた、私を育ててくれた、

ーお母様を。

「お…………っ」
鈴を鳴らそうとして、お母様が誰かの襟首を摑んでいるのが目に入った。
微かにだけど、声も聞こえてくる。
『………………じゃない!………………だ!』
何の会話かは判らなかった。
けれどもその顔から、何となく私の事かなと思った。
お母様が襟首を離す。お母様は摑んでいた男を睨んでいた。

…………………………………チリン。

たまらずに鈴を鳴らす。
お母様が、ゆっくりと振り向いた。

三十二章→←三十章



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (60 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
74人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

茉里 - ありがとうございます!続編もじゃんじゃん更新しますので……よろしくお願いします! (2019年6月4日 19時) (レス) id: 0903b0c425 (このIDを非表示/違反報告)
ク レハ(プロフ) - 完結おめでとうございます!続編のほうも応援させていただきます!! (2019年6月4日 18時) (レス) id: ddd19fa939 (このIDを非表示/違反報告)
カゲロウ(白ヰ迷ヰ戌)(プロフ) - ええ!勿論です! (2019年6月3日 18時) (レス) id: 26ee7c4c14 (このIDを非表示/違反報告)
茉里 - 最後まで読んでくださってありがとうございました!新作書いたらまたよろしくお願いします! (2019年6月3日 17時) (レス) id: 0903b0c425 (このIDを非表示/違反報告)
カゲロウ(白ヰ迷ヰ戌)(プロフ) - 完結おめでとうございます! (2019年6月3日 17時) (レス) id: 26ee7c4c14 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:茉里 | 作成日時:2019年5月27日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。