三十一章 ページ31
「乱歩さん、本当によかったのかい?」
与謝野女医の問いかけに、乱歩は首を傾げる。
「何が?」
「あの子を一人で行かせた事だよ。妾らだって行けなくはないだろう?」
「いいんだよ」
乱歩は確信めいた声で云う。
「これは夏君が、自分の力で解決すべき問題だから。川海女医の心を動かせるのはー夏君だけなんだよ」
せっかく鈴があるんだから、姿を現して「川海咲子女医はどこにいますか?知りませんか?」って訊いて回りたいところだけど………。
変に噂になっても困るしなぁ。
否、いっそ噂になって、お母様の耳にも届いてしまった方が手っ取り早いかも?
などと考えているうちに、下の景色は全く違うものになっていた。
綺麗な桜が咲き誇っていて、街の人達がお花見をしている。
「綺麗だな………」
思わず呟いた後、目を見張る。
決して桜が綺麗だったからではない。見つけたからだ。探していた、私を育ててくれた、
ーお母様を。
「お…………っ」
鈴を鳴らそうとして、お母様が誰かの襟首を摑んでいるのが目に入った。
微かにだけど、声も聞こえてくる。
『………………じゃない!………………だ!』
何の会話かは判らなかった。
けれどもその顔から、何となく私の事かなと思った。
お母様が襟首を離す。お母様は摑んでいた男を睨んでいた。
…………………………………チリン。
たまらずに鈴を鳴らす。
お母様が、ゆっくりと振り向いた。
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茉里 - ありがとうございます!続編もじゃんじゃん更新しますので……よろしくお願いします! (2019年6月4日 19時) (レス) id: 0903b0c425 (このIDを非表示/違反報告)
ク レハ(プロフ) - 完結おめでとうございます!続編のほうも応援させていただきます!! (2019年6月4日 18時) (レス) id: ddd19fa939 (このIDを非表示/違反報告)
カゲロウ(白ヰ迷ヰ戌)(プロフ) - ええ!勿論です! (2019年6月3日 18時) (レス) id: 26ee7c4c14 (このIDを非表示/違反報告)
茉里 - 最後まで読んでくださってありがとうございました!新作書いたらまたよろしくお願いします! (2019年6月3日 17時) (レス) id: 0903b0c425 (このIDを非表示/違反報告)
カゲロウ(白ヰ迷ヰ戌)(プロフ) - 完結おめでとうございます! (2019年6月3日 17時) (レス) id: 26ee7c4c14 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茉里 | 作成日時:2019年5月27日 21時