【1】異変 ページ1
『ほら、いい加減離れてよ…、』
「やだぁ…」
光太郎の家で勉強をしていると、数学の宿題が終わった瞬間、
机を前に座る私の後ろに、ぽすっと座り込んだ。
そのまま、私が『?』、と振り向く時間もなく、
光太郎が長い脚で私を挟み、
そのままお腹辺りに腕を回してきた。
背中に光太郎の胸板が当たり、じんわりと体温を感じる。
光太郎の頬が、肩甲骨辺りにピトッと付くのが分かった。
…まぁ要は、バックハグをされてるんだろ。
ぎゅうぅ、と抱き着いてくる光太郎を一瞥して、離れて、と言った。
「なんで!?」
『なんでって…、勉強してるの見えないの?』
「でも俺終わった、」
『私は終わってないよ』
「…抱き着いてたら駄目なの?」
『邪魔であることは確かね』
「…俺邪魔?」
『うん』
すんっ…、と沈黙が落ちる。
お、諦めたかな、と思って机に向き直った…のだが。
瞬間、鼻をすする音が聞こえてきた。
背中に意識が行った瞬間、肩甲骨辺りが濡れてるのに気付く。
びっくりして、少し身を捩ると、
くっついた光太郎の身体が離れた感触があって、
バッと後ろを振り返った。
…そこには、片手の手のひらと、片手の手の甲で、
溢れる涙を必死に拭う光太郎がいた。
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作者名:莉子 | 作成日時:2024年1月4日 1時