３６３ ページ34
未熟者
笹川了平の声を無視して振り切り、エレベーターに乗り込んでから。
私はようやく冷静になって、壁に頭を打ち付けた。
ゴンッと鈍い音がしたけれど、そんなことはどうでもいい。
｢……彼の言うことはもっともだ。
雹がどれだけ危険なのかも、ラルに散々言われてきた｣
なのに、私はわかっていなかった。
わかったつもりでいてきちんと自覚していなかった。
｢……っ、悔しい……！｣
それに自分が情けなくてしょうがない。
けれど、これが全部過去の自分が作り上げてきた彼らとの関係だ。
彼らを守りたいと願うのなら……。
｢……乗り超えなきゃ｣
どこまでこの世界を受け入れられるかはわからないけれど。
自分のもつ力を受け入れ、その力をどう扱うか、考えなければいけない。
｢ただ……受け入れただけじゃなかったんだ｣
あの部屋で見つけた、アルバムの中で彼らと共に能天気に笑う未来の私を見て怒る気は失せた。
勝手に死んだことは呆れるし、許せないけれど。
彼女も彼女なりにちゃんと考えて、沢山悩んで決めたのだ。
彼らを守るために、彼らと共にいる覚悟を。
｢……シナリオを見守るにはちょうど良いポジション。
彼らを守るのにも良いポジション。
一石二鳥ってことで｣
リングに雹の炎を灯し、匣に差し込むと、飛び出した白銀の光が兎の形になり、私の肩に乗った。
そして、あの部屋から見付けた大量のリングを残りの指にはめてふたつの匣を開ける。
巻き上がるように天井まで高く飛び出し、展開した『大空蝶』。
死ぬ気丸をふたつ飲み込み、サーベルを構える。
ここに来る前にモニタルームの機械を弄ったことで、目の前には数多の雑魚のホログラムが現れた。
｢────さっさと強くなってやる｣
それに、笹川了平に謝りに行かなければ
その日の修行は、恐らく凉がいればすぐさま止めるであろうほどに過酷なものだった。
しかし、当の本人は自身の体調を心配する師匠に笑ってこう言うのだろう。
これは強くなるためでもあり、戒めのためでもあるのだから止めないで、と。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 499人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
咲夜 - なので更新頑張ってください！ (2017年9月27日 7時) (
レス) id: c457f737d3 (このIDを非表示/違反報告)
咲夜 - なんと......嬉しい限りです！ありがとうございます！テストよりこっち優先にしたいぐらいです！ (2017年9月27日 7時) (レス) id: c457f737d3 (このIDを非表示/違反報告)
とうか(プロフ) - この小説大好きです☆これからも更新頑張ってください☆*:.｡. o(≧▽≦)o .｡.:*☆応援してます (2017年9月26日 0時) (レス) id: 9297054df9 (このIDを非表示/違反報告)
咲夜 - ありがとございます！嬉しいです！ (2017年9月19日 0時) (レス) id: c457f737d3 (このIDを非表示/違反報告)
紅桜(べにお)(プロフ) - 咲夜さん» できる時に更新しておきたくて…(苦笑)今日は更新しませんが、毎回2~3話追加のペースで進めていきたいと考えてます (2017年9月18日 18時) (レス) id: b79b33c03b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：睡 | 作成日時：2017年8月28日 22時
