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第捌什肆話「春風を嘯く君は」 ページ34

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苦しそうに口の端から水を吐いた時透くんの肩が呼吸をしようと必死に動き始める。

一度動かしていた手を止めて胸元に耳を寄せてみると、心臓がちゃんと動き出してた。


「…っ、はあぁぁ…!よ、良かった……!」


彼の呼吸を邪魔しない様に口元の水を手拭いで拭き取りながら、脱力。

心臓停止間際からの立ち直りが早くて本当に助かった。流石は柱。

人命救助なんて初めてしたから凄い不安だったけど、上手くいって良かった。


「おやおや?ご無事でしたか」


「っ!!……え、」


後ろからの気配に条件反射的に飛び退いて苦無を構えようとして────目を瞬く。


「時透君と、貴女は…ああ、新入りの鬼殺隊員の方ですね。下弦の弐が現れたと聞いて近くまで救援に来たのですが…一足遅かったようです。残念残念」


くすくす笑ってるのに、残念なのか……。

凄く柔らかくて優しそうなのに、何処か胡散臭い微笑みを浮かべる、その人の名は確か……。


「師匠。また新しい薬の開発ですか。程々になさって下さいね」


真夜中に何やってるんだこの人は。

浅い眠りから覚めたわたしが気が付くと、師匠は夜な夜な薬の研究をしてることがあった。

ついこの間も体に障るから止めた方が良いと苦言を呈したのにこの人はまったく。

鴉に何かを持たせて飛ばしてから、師匠は気まずそうに振り返った。


「すみません…起こしてしまいましたか。これは知り合いに頼まれた物でして」

「へぇ…どんな方何ですか?」

「……それは、貴女自身が逢って見て決めた方が良いでしょうね」


ですが、敢えて言うならば……蝶の様に舞い、蜂の様に刺す。そんな剣士……ですかね。名前は、


「……胡蝶、しのぶさん?」

「あら。私のことを知っているんですか?」


ぱちぱちと目を瞬かせる胡蝶さん。

こんな美人、記憶が無いことを除けば生まれて初めて見た。
隊服を着てるのに、凄く可憐なその容姿に見惚れちゃう。

善逸くんなら感激のあまり卒倒しちゃんじゃないかなあ。ご飯だけで三杯位食べそう。

じゃなくて。

咳払いをしてどうでもいい思考を払う。


「ししょ…杜乃さんから聞きました。薬学に精通してる柱の方だって…」


「!」


杜乃さんという単語に僅かな反応を見せる胡蝶さん。

やっぱりこの人が師匠の薬の依頼主だったんだ。

第捌什伍話「椿は紅に染まる」→←第捌什弎話「焔よ、奈落を照せ」



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素敵な作品ですね - めちゃくちゃ面白くてシリーズの最初から一気読みしてしまいました!更新楽しみにしてます。 (2019年10月23日 14時) (レス) id: 87b58a18e6 (このIDを非表示/違反報告)
人形師(プロフ) - 凄く面白いです!続きが気になります。応援してます!! (2019年10月6日 0時) (レス) id: 05191dc1a4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年8月7日 8時

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