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第柒什陸話「鷹と鳩の違い」 ページ26

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そう思ってた時期もわたしにはあったんだよね。


「…あの、貴方は鬼殺隊員の方ですよね?公の場で一般人と揉めるのはよして下さい」


手を引いて逃げた先は住宅の裏手。

ぱっと手を離して開口一番にそう少女は困った顔で僕を叱った。

青臭さが抜けていない小綺麗な隊服、刀を右に差している奇抜な剣士。

階級はおそらく一番下の癸か、なら新人のこの子は何もわかっていない。
今のこの町の状況を、何一つ。


「…別に、ぶつかってきたのは向こうだし。それに何なの君。柱である俺の時間を無駄にしないでくれる?」


柱である僕の時間とただの一隊士である君の時間が同じ価値だと思わないで欲しい。

告げると、少女はそうですね。貴方の言ってることは正しいかと。と頷いて顔を顰めた。


「ですけど。柱であっても、人を怒らせたならば謝るのが筋かと存じます。無駄ではありません。それとも、力で黙らせますか?その刀は人を斬るモノではないんですけどね」


少女の目線は僕の腰にある刀にある。

確かにこれは鬼を斬る為のもの、けどそれを邪魔される筋合いはない筈だ。

なのに何でこの子はそれを邪魔して、俺に説教してるんだろう。
鬼を斬りに来たんじゃないのか。


「……癸のクセに俺に説教?片腹痛いね。この町の状況を理解してる?」


失礼な、わたしの階級は丁です。そう怒られても、僕には関係ないことだ。
そもそも、君の階級なんてどうでもいいんだけど。

一頻り一人で勝手に憤慨したかと思えば、少女は顔を顰めたまま真っ直ぐに僕を見る。

……!
何だろう、雰囲気が急に変わった。
目を逸らせない。


「港町のみなさん、ピリピリされています。当たり前です。人が夜な夜な消えてるんですから。皆怯えてるんです。それを察した上で動かなければ」


静かに諭されてる暇なんてない。
なのに、何でだろう。

懐かしいような、落ち込んでいるような。
……自分は今怒られて落ち込んでるのか?

わからない。けど、前にも何処かでこんなことがあった気が……何処でだろう。わからない。


「鬼を狩ることばかり考えて、時間の無駄をしてるのは貴方の方ですよ」


手を引かれて一緒に歩きだす。
振り払ったって良かったのに、僕は出来なかった。
懐かしい記憶(なにか)を思い出せそうな気がして……。


何も言い返せなかった。

第柒什柒話「白雨を知らない」→←第柒什伍話「海猫が鳴く前に君を」



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素敵な作品ですね - めちゃくちゃ面白くてシリーズの最初から一気読みしてしまいました!更新楽しみにしてます。 (2019年10月23日 14時) (レス) id: 87b58a18e6 (このIDを非表示/違反報告)
人形師(プロフ) - 凄く面白いです!続きが気になります。応援してます!! (2019年10月6日 0時) (レス) id: 05191dc1a4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年8月7日 8時

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