第柒什貮話「障子の穴は塞ぐべし」 ページ22
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どうしたのだろう。
具合が悪くないと良いが……。
「おばさま」
裏手で黙々と湯を沸かす用意をしていたお婆さんに声を掛けると、穏やかな声音でどうされましたかと問われる。
気配を消してたのにこの落ち着きよう、このお婆さんは随分と長い間鬼殺隊員の世話をしてくれてるんだな。
こそこそしてたのがちょっと馬鹿らしく思えてきちゃうな。
「わたし……明日の朝には発つんですけど、あの三人には黙ってて下さい。わたしがいなくなったところで別段、何か言ったりすることはないと思うんですけど…念の為」
こそこそ小声で申し出たわたしに、お婆さんは小さく頷くだけで詮索はしないでくれた。
流石老練者。
こういうのは本当に有難い。
「ところでA様……お風呂のお支度を整えておきましたので、お体を温めてからゆっくりとお休みになられてはいかがでしょうか……?」
柔らかい微笑みを浮かべながら提
案してくれるお婆さんにそうですね、と頷く。
「はい、ありがとうございます。一晩ですけどお世話になります」
朝方には出ますけど、見送りは結構ですからねと付け足しておく。
炭治郎くん達には悪いけど、彼らの怪我の完治まで一緒にいるつもりは毛頭なかった。
わたしが足を止めてる暇はちっともないんだ。
「ふぅ……」
お風呂を頂いてから宛ててもらった部屋に戻る途中。
炭治郎くん達の部屋の前を部屋割り的に必然と通るけど、気配はないみたいでほっとする。
部屋は別々にして貰った。
善逸くんは耳が良いから、起きた時気付かれたら面倒だしね。
ついでに何かされそう。
……ナニとは言わないけど。
「三人は寝てるみたいだね……ん?」
襖の隙間からこっちを見てる桃色の双眸が見え、それに合わせるようにしゃがむ。
「禰豆子ちゃん。起きてたの?」
「……むうぅ?」(誰?という顔)
「あ、わたしのことまだ何も言ってなかったよね。わたしはA。炭治郎くんと同じ鬼殺隊士です。よろしくね」
そういえばわたし、この子のこと殺そうと思ってたんだよね。
最終選別の時に鬼は殺さないとって思ってたんだけど……何か、かこの子、今まで見てきた鬼とは違うような……。
「うぅう!」(嬉しそうに笑う)
にこりと竹を咥えたまま笑みを浮かべる禰豆子ちゃんの気配の色は、間違いなく鬼のものだった。
第柒什弎話「月明かりの下で」→←第柒什弌話「腹八分目より…」
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素敵な作品ですね - めちゃくちゃ面白くてシリーズの最初から一気読みしてしまいました!更新楽しみにしてます。 (2019年10月23日 14時) (レス) id: 87b58a18e6 (このIDを非表示/違反報告)
人形師(プロフ) - 凄く面白いです!続きが気になります。応援してます!! (2019年10月6日 0時) (レス) id: 05191dc1a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:睡 | 作成日時:2019年8月7日 8時