第柒什話「休息は薬」 ページ20
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そして。
遂に藤の花の家紋のお屋敷に到着した。
「カァアーッ、休息!休息!負傷ニツキ、完治スルマデ休息セヨ!」
「えっ?休んで良いのか?俺今回怪我したまま鬼と戦ったけど……」
「ケケッケッ」
「いやケケッケッって……」
絶対その鎹鴉、悪意あって炭治郎くんに任務へ行かせてるんじゃないのかな……。
じとー…と鎹鴉を見てたけど、そうだ、早くお医者様を呼んで頂かないと。
わたしは一歩前に出て門の前に立ち、声高かに来訪を告げた。
「申し訳ありません!鬼狩りの者です!負傷の為、休息を取らせて頂きたく!」
「ちょっ、A……!?こんな時間に大きな声を出したら……」
慌てる炭治郎くんにいいから待ってと返してから、門から人が出てくるのを待つ。
「はい……」
待たされたと思うよりもずっと早く、大きな門の傍に造られた小さな扉から出てきたのは、白髪の穏やかな面持ちのお婆さんだった。
「あっ、夜分に申し訳ありません!」
「お化けっ…お化けだ!」
「こら!!」
怯えてまたわたしは後ろに隠れる善逸くんに怒る炭治郎くん。
わたしまで怒られてるみたいだ。
「鬼狩り様でございますね……どうぞ……」
ゆっくりと扉を大きく開けて中へ促してくれるお婆さんに続いて、全員中へ入る。
奥にあるお屋敷までの短い砂利道は月が出てて、白い石畳がちょっと眩しいくらいに照らされてた。
庭師に丁寧に整えられたであろう木々に囲まれた石畳の道を歩く。
「何あの婆さん、歩くのが異様に速いんだけど……!」
「歩きにくいから抱き着くのは止めてね」
ガタガタ震えてる善逸くんが言う通り、お婆さんは見目に反して歩くのがやたら速かった。
負傷してるとはいえ若いわたし達が歩く速度は普通ならお婆さんよりも速い筈なのに、お婆さんは三歩も五歩もわたし達の前を歩いてる。
そしてお屋敷に入ると襖を開けて、
「お召し物でございます……」
と各々の着物を提供してくれ、
「お食事でございます……」
着替えを済ませたわたし達に合わせるかのように、これまた全員分のお膳に乗った食事を出してくれた。
「妖怪だよ炭治郎!あの婆さん妖怪だ!速いもん異様に!妖怪だよ!妖怪婆……」
さっきから失礼なことを言ってる善逸くんに、遂に炭治郎くんの怒りの鉄槌が下った。
まぁ自業自得だよね。
「違うよ。あの人は藤の花の家紋の一族の人」
第柒什弌話「腹八分目より…」→←第陸什玖話「ぬくもりに触れる」
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素敵な作品ですね - めちゃくちゃ面白くてシリーズの最初から一気読みしてしまいました!更新楽しみにしてます。 (2019年10月23日 14時) (レス) id: 87b58a18e6 (このIDを非表示/違反報告)
人形師(プロフ) - 凄く面白いです!続きが気になります。応援してます!! (2019年10月6日 0時) (レス) id: 05191dc1a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:睡 | 作成日時:2019年8月7日 8時