第陸什柒話「お後が宜しい様で」 ページ17
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「伊之助も手伝ってくれ。まだ屋敷の中に殺された人がいるんだ」
「生き物の死骸なんて埋めて何の意味がある!やらねぇぜ、手伝わねぇぜ!そんなことより俺と戦え!!」
お墓の石を並べてくれてた炭治郎くんの申し出をばっさりと切り捨てて構え始める伊之助くん。
困ったなあ。手伝ってくれないのはわかってたけど、どうしようか……。
どうにか大人しくしててくれないかと思案してると、炭治郎くんが申し訳なさそうな顔をして。
「そうか……傷が痛むから出来ないんだな?」
「……は?」
訝しげな顔で手を止める伊之助くんに、さらに炭治郎くんの優しさとも煽りとも取れる言葉が続く。
「いや、良いんだ。痛みを我慢出来る度合いは人それぞれだ。亡くなってる人を屋敷の外まで運んで土を掘って埋葬するのは本当に大変だし、Aや善逸とこの子達で頑張るから大丈夫だよ」
「はぁーん!?舐めるんじゃねぇぞ!百人でも二百人でも埋めてやるよ!俺が誰よりも埋めてやるよ!!」
ムキになって凄い勢いで建物の中へ入って行った伊之助くん。
建物の中からも聞こえる猪突猛進!猪突猛進!の掛け声にもうわたしは耐えられそうにない。
「A、笑ってないで手伝ってくれ」
「ちょっと、待っ、て……!お腹痛っ…ふ、ふふふ…っ」
驚いたように目を見開いてから呆れた顔で炭治郎くんに言われたけど、地面を転がる程わたしは笑い転げた。
こんなことで笑うなんてわたしはどうかしてるのかもしれないなあ。
埋葬を終えて山を下ることになった。
「正一くん強いんだ!!正一くんに俺を守って貰うんだ!」
何が遭ったのか知らないけど、正一くんを連れて行こうとごねる善逸くんを宥めなければもいけなくなった。
「正一くんは嫌がってるだろう!」
炭治郎くんが彼の羽織を凄い力で引っ張っても引き剥がせそうにないので、此処は実力行使で失礼しよう。
「はいだめだから寝ててね〜」
ごねる善逸くんに容赦なく手刀を入れ、ぐったりと気絶した彼を背負う。
まったく別れ時まで見苦しいんだからこの子は。
後は炭治郎くんの鎹鴉が藤の花の香り袋を吐き出して、清くんに渡していた。
良かった。これなら鬼に狙われることはないだろう。
吐き出したそれを拭きながら、清くんには藤の花の取れる場所と、香りが切れた時に新しく作る方法を教えておく。
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素敵な作品ですね - めちゃくちゃ面白くてシリーズの最初から一気読みしてしまいました!更新楽しみにしてます。 (2019年10月23日 14時) (レス) id: 87b58a18e6 (このIDを非表示/違反報告)
人形師(プロフ) - 凄く面白いです!続きが気になります。応援してます!! (2019年10月6日 0時) (レス) id: 05191dc1a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:睡 | 作成日時:2019年8月7日 8時