第陸什貮話「お喋りも闌に」 ページ12
.
そこから先は俺の愚痴ばっかだったけど、Aちゃんは文句一つ言わずに相槌を打ったりして最後まで聞いてくれた。
だけどどんなに話を振っても、自分のことは何にも話してくれない。
それが凄くもどかしかった。
「…そういや、何でAちゃんは鬼殺隊員になったの?可愛いんだからもっとこう……お嫁さんとかになれば良かったのにさぁ」
何気ない世間話を振ってみて、つい自分で妄想してしまう。
お嫁さんになったAちゃん可愛いんだろうな……って違う違う、お嫁さんに欲しいけど、今は彼女に自分のことを話して欲しいんだよ。
そしたら仲良くなれそうだし、何か困ってることがあるなら力になりたい。
淡い期待を抱きつつ、Aちゃんの返答はまた少し悩んでからの回答だった。
「成り行きかな。うちの師匠も柱だったらしいし、継子が欲しかったんだと思う。あとは……」
ふと、俯いてAちゃんは視線を足元に彷徨わせる。
言うか言わないか迷ってる音がする。
俺を警戒してるから迷ってるんじゃなくて…信じて貰えるか、不安で不安で仕方なくて迷ってるんだ。
「Aちゃん、」
「……何でもない。それより早く行こう。日が暮れちゃうよ」
あ、だめだ。
背を向けてスタスタ歩いて行ってしまうAちゃんを慌てて追いかける。
何で俺はこんな時まで、彼女の気持ちを吐き出させてあげられるような上手い言葉が出てこないんだろう。
また彼女は誤魔化して笑って、どんどん暗いところにひとりで行ってしまう。
どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうすればいい?
「っ……Aちゃん!!」
「っ?」
襖に手をかけた彼女の手をぐいっと引っ張ってこっちへ向かせる。
今度こそ逃げられないよう、しっかり両手を握って大きく息を吸う。
心臓がまろびでそうなくらいばくばくいってて凄く痛くて五月蝿かった。
「な、悩みあるなら言ってよ!頼りになんないかもしれないけど、俺も一緒に考えるからさ!」
ああ違うよそうじゃなくて……!的外れなことを言うポンコツな口が憎たらしい。
212人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
素敵な作品ですね - めちゃくちゃ面白くてシリーズの最初から一気読みしてしまいました!更新楽しみにしてます。 (2019年10月23日 14時) (レス) id: 87b58a18e6 (このIDを非表示/違反報告)
人形師(プロフ) - 凄く面白いです!続きが気になります。応援してます!! (2019年10月6日 0時) (レス) id: 05191dc1a4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:睡 | 作成日時:2019年8月7日 8時