54.伝えたい人【JH】 ページ8
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みんなに迷惑かけて、心配かけたのに、
理解してくれて、背中を押してくれた。
クプスも、"行ってこい"なんて、言わないと思ってた。
本当に俺の居場所はあそこしかないんだなって思う。
飛び跳ねるように上着を掴んで、練習室を出た俺は上着の中のスマホを取り出して、カトクを開く。
いつの間にか、下のほうに下がってしまった名前。
あんなに距離を置こうとして、躊躇していた指は、今は迷いなくAさんとのトーク画面を開く。
今日は土曜日。
Aさんは休みか。
早足で事務所を出て、メッセージを送る。
急にどこにいるかと聞かれたら、驚くだろう。
自分で言うのもアレなんだけど、結構考えるほうだと思う。
あー、前に、Aさんに言ったな。
JH「Aさんは、考えすぎるタイプなんだね」
俺たちは、似た者同士なのかも。
なんで思い出さなかったんだよ。
Aさんだっていろいろ考えてたんじゃないのか。
またタラレバが出てきそうになって、少し自分に呆れる。
JH「エーイ、ユン・ジョンハンッ、いつまで言ってんだよ〜！」
なのに、既読マークが付かないメッセージを見ても、もしかしたら拒否されているかもなんてことは今一切考えてなかった。
痺れを切らして電話する。
はは、こんなドラマみたいなことあるんだなー。
繰り返すコール音。
JH「いや...出てくれないと俺が事務所飛び出してきた意味ないじゃん」
笑えてくる状況に、どうしようかと考えあぐねる。
よし、もうこうなったらずっと電話してやる。
もう一度電話をかけようとすると、
♪〜♪〜
JH「Aさん！」
≪は、はい...えっと...≫
久々に聞いた声は、戸惑いを孕んだ声だったけど、変わらず柔らかくて、優しかった。
JH「Aさん、今どこにいる？」
≪え、今...？会社、ですけど...≫
JH「お？なんで？あ、いやいや後で聞く。とりあえず、会社まで行くから」
≪ええ？会社に...？≫
JH「うん。だから、俺がスムーズに広報部まで行けるように受付さんに言っといてね」
終始戸惑いながら、返事をしてくれたAさん。
早く、君に会って伝えなきゃ。
全部、伝えるから。
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作者名：Akubi | 作成日時：2023年3月9日 11時
