18章『留守番』3 ページ32
「さっきから何なんだよ、失礼だな!」
「別に何でもないわ。出会った時と比べて、随分と口調が変わったわね、フェリックス?」
そう笑いながら言うリリシアに、フェリックスは痛いところを突かれたように顔を引きつらせた。会話をしていた思ったが、彼は当初はもっと紳士的な言葉遣いだったはずだし、一人称は「俺」じゃなくて「僕」だったはずだ。
「あれはその…母さんに口うるさく言われてたんだよ。『丁寧な言葉遣いで話しなさい』って。その為にフルミンウォーレ入学直前には俺って言うたびに夕食にゴーヤ入れられたんだからな!」
あの苦味を思い出したのか、顔をしかめるフェリックス。相当に辛かったらしい。しかし、その訓練の甲斐も虚しく、染み付いた言葉遣いは矯正できなかったということだろう。
「今、フェリックスが『僕』とか言い出したら寒気が止まらないわ。そのままで私はいいと思う」
「リリシアも最初はおとなしかったのに、今じゃ天然毒吐き人間だもんな…」
げっそりした表情をして前に向き直ったフェリックス。リリシアも倣って前を向きながら、先ほどのフェリックスの話を頭の中で反復させていた。
フェリックスは「母さん」と言ったのだ。ここ一年、思い返してみれば皆んなで家族の話をしたことはなく、考えたこともなかった。しかし、皆んなには当然のように家族がいるのだ。長期休暇に入り、ほとんどの生徒が実家に帰省する。皆んなには、帰るべき家があるのだ。
これ以上このことについて考えていては、せっかくの楽しいパーティーなのに暗い気持ちになってしまう。そう思い、近くを歩いていたウェートレスに空のグラスを渡した。各寮で人知れず食事を準備したり、配膳したりしてくれていたウェートレスやウェイター、コックたちも今日で暫しの休暇に入る。明日からは、残る生徒のために食事は届けられるものの、作りたてではないのだ。今のうちに出来立てホヤホヤの料理を存分に味わっておかねば。
とは言え、並んでいる食べ物はもうデザートメインになっていた。ならばと大好きなフルーツタルトを皿に取り、フォークを探していると、手に持った皿に大量のケーキを乗せたジェシカと遭遇する。
「リリシア、ヘレンは?」
彼女の皿に乗っているケーキを数えて、太らないジェシカの体質を恨めしく思っていると、そう質問された。そう言えば、ヘレンは何処にいるのだろう。てっきりジェシカと一緒にいるものと思っていたが、彼女の近くにはいないようだ。
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明咲こより - 美坂るぅさん» 了解致しました。 (2017年2月5日 14時) (レス) id: 67d07cb40f (このIDを非表示/違反報告)
美坂るぅ(プロフ) - 明咲こよりさん» そうですね、消しておきます。どうやらコメ欄とボタンの色がコピーできていないようですので、ひつようならよろしくお願します。 (2017年2月5日 14時) (レス) id: a41f8e5530 (このIDを非表示/違反報告)
明咲こより - 美坂るぅさん» できました!画像が重なってしまっているのは、自分で調べて直します!作成して下さり、本当にありがとうございました。それから、パスワードが書いてあるコメントは消去した方が宜しいのでしょうか? (2017年2月5日 14時) (レス) id: 67d07cb40f (このIDを非表示/違反報告)
美坂るぅ(プロフ) - 明咲こよりさん» 了解です。 (2017年2月5日 13時) (レス) id: a41f8e5530 (このIDを非表示/違反報告)
明咲こより - 美坂るぅさん» 申し訳ありません…urlを入れているのですが、画像が表示されません。もう少し試してみますので、少々お待ち下さい。 (2017年2月5日 13時) (レス) id: 67d07cb40f (このIDを非表示/違反報告)
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