18章『留守番』1 ページ30
一年間なんて、過ぎ去るのはあっという間だ。目の前に広がる豪華な飾り付けや、いつもにもまして美味しげな香りを放っているディナーを見て、リリシアははしみじみとそう思っていた。
修了式の夜。フルミンウォーレ魔法学校の大ホールでは、一年間の学習を終えて長期休みへの期待に胸を膨らませた生徒たちが、その学年最後の晩餐を楽しんでいた。窓の近くに寄りかかれば、温い風が隙間から微かに感じられる。季節はもうすっかり夏だった。
大ホールの正面にある教員たちの席では、キッシンジャーとエッガーが乾杯していた。二人が並ぶと、キッシンジャーの童顔も相まって親子に見えなくもない。生徒の前では滅多に笑顔を見せないエッガーだったが、酒が入っていることもあってかキッシンジャーと談笑している。
別の場所では、若干顔が引きつったリンテラストのグラスにグレイシアがワインを注いでいた。普段の彼女からは想像がつかないほどニコニコ笑って、尋常じゃない量の空のワインボトルが彼女の前にあることを考えると、相当酔っ払っているようだ。
…そして、もちろん教員たちの席にフェザーの姿はなかった。
騒動の後、コンラッドによって全校生徒にフェザーについて説明がなされた。とは言っても、教員会議の結果、真実を伝えるという結論には至らなかったらしい。フェザーは一身上の理由で急遽、職を離れざるを得なかったと説明がなされた。
その説明に対して、当然訝しむ声もあったのだが、それぞれの寮監督にフェザーに関する噂が広まらないようにという強い要請があったのだろう。疑問の声は、やがて下火になっていった。その裏には教員による尽力があったに違いない。
フェザーの後任の魔法地理学の教師はおらず、授業は中途半端なまま終わってしまった。来年には新しい教師が来るということだったが、魔法地理学を重視して学ぶのは一年生の時だけらしく、二年次からは魔法史の授業が増えるらしい。必然的に魔法地理学の授業は少なくなってしまう。たとえフェザーの正体が何であろうとも、リリシアの魔法地理学が好きな気持ちは変わらない。それだけに、好きな科目を十分に学べなかったということが残念でならなかった。
とはいえ、過ぎたことに不満を抱いていたって、過去は変わらないのだ。いくら魔法でも。そう思い、窓枠につけていた背中を離した。頭を左右に振り、ネガティブな考えを追い出す。
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明咲こより - 美坂るぅさん» 了解致しました。 (2017年2月5日 14時) (レス) id: 67d07cb40f (このIDを非表示/違反報告)
美坂るぅ(プロフ) - 明咲こよりさん» そうですね、消しておきます。どうやらコメ欄とボタンの色がコピーできていないようですので、ひつようならよろしくお願します。 (2017年2月5日 14時) (レス) id: a41f8e5530 (このIDを非表示/違反報告)
明咲こより - 美坂るぅさん» できました!画像が重なってしまっているのは、自分で調べて直します!作成して下さり、本当にありがとうございました。それから、パスワードが書いてあるコメントは消去した方が宜しいのでしょうか? (2017年2月5日 14時) (レス) id: 67d07cb40f (このIDを非表示/違反報告)
美坂るぅ(プロフ) - 明咲こよりさん» 了解です。 (2017年2月5日 13時) (レス) id: a41f8e5530 (このIDを非表示/違反報告)
明咲こより - 美坂るぅさん» 申し訳ありません…urlを入れているのですが、画像が表示されません。もう少し試してみますので、少々お待ち下さい。 (2017年2月5日 13時) (レス) id: 67d07cb40f (このIDを非表示/違反報告)
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