17章『反転、穏やかな日々』1 ページ23
その日の夜、リリシアは一人医務室のベッドに横たわり、壁一面に広がる窓から星空を眺めていた。風車に住んでいた頃に見上げていた星空は美しかったが、ここから見る星空もそれに勝るとも劣らない。
色々なことがありすぎて、リリシアはまだ眠る気にはならなかった。隣から規則正しい寝息が聞こえてくる。就寝時間になって、マリーが体調を崩して医務室に訪れたのだ。マリーにとっても今日は、リリシア以上にショッキングな出来事の連続だったに違いない。
眠れぬまま過ごしていると、何だか無性に喉が渇いてきてしまった。マリーを起こさないように忍び足でベッドから降りる。
と、その時。
「リリシア…起きていますの?」
隣から美しいソプラノの声が聞こえてきた。起こしてしまったのかと慌ててそちらに顔を向ける。寝起きなこともあってかやや髪の乱れたマリーは、それでいて息を呑むような美しさだった。
私も成長したらこんな風になりたいなぁ。切実にリリシアは思う。
「ごめんなさい。起こしてしまいましたか?」
「いいえ、先程から起きてはいましたわ。まだ夢見心地だったところで、貴女が起きようとしたものですから」
ベッドに腰掛けてマリーが微笑んだ。ベッドの側で立ちっぱなしなのも居心地が悪いので、リリシアも習ってベッドに腰掛ける。そのリリシアのそそくさとした行動がおかしかったのだろう。マリーがふっと笑ったのが伝わってきた。
「今日は、ありがとうございましたわ」
微笑んだままに頭を下げるマリーに、慌てるリリシア。あたふたしながら「そんな、それほどでもないです!」と言うと、マリーはやっと頭を上げた。
「貴女達がいなければ私たちは今頃無事では済まなかったでしょう。闇獣やダーケルのことを知っていながら危険を察知できなかったなんて、上級生としてあるまじき行為ですわ」
そう言ってマリーは悔しそうに目を伏せる。上級生としてのプライドや自分への自信が、今回の事件によって傷つけられたことは間違いない。
しかし、フェザーの件は生徒はおろか、教職員すらも察知できなかったことなのだ。それほどまでに彼女の策略は巧みだった。
そうリリシアは励まそうとして、口をつぐんだ。マリーだってその事は理解しているだろう。それでもなお自分が許せないからこそ、こうしてリリシアに話しているのだ。
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明咲こより - 美坂るぅさん» 了解致しました。 (2017年2月5日 14時) (レス) id: 67d07cb40f (このIDを非表示/違反報告)
美坂るぅ(プロフ) - 明咲こよりさん» そうですね、消しておきます。どうやらコメ欄とボタンの色がコピーできていないようですので、ひつようならよろしくお願します。 (2017年2月5日 14時) (レス) id: a41f8e5530 (このIDを非表示/違反報告)
明咲こより - 美坂るぅさん» できました!画像が重なってしまっているのは、自分で調べて直します!作成して下さり、本当にありがとうございました。それから、パスワードが書いてあるコメントは消去した方が宜しいのでしょうか? (2017年2月5日 14時) (レス) id: 67d07cb40f (このIDを非表示/違反報告)
美坂るぅ(プロフ) - 明咲こよりさん» 了解です。 (2017年2月5日 13時) (レス) id: a41f8e5530 (このIDを非表示/違反報告)
明咲こより - 美坂るぅさん» 申し訳ありません…urlを入れているのですが、画像が表示されません。もう少し試してみますので、少々お待ち下さい。 (2017年2月5日 13時) (レス) id: 67d07cb40f (このIDを非表示/違反報告)
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