5章『杖探し・箒探し』6 ページ33
シダレザクラは、不意に吹いた一陣の風によって柔らかな枝を揺らす。
その時だった。
『そなたが、水狐のプリゼノですね?』
頭の中に、話しかけてくる声が一つ。リリシアはハッとして辺りを見回すが、誰もいない。
もしかして…とシダレザクラの方を向くと、シダレザクラはまた枝を揺らす。
それと同時に『そうですよ。妾はシダレザクラ。この結界の森でそなたと会えるのを待ちわびておりました』とまた声が響く。
『来てくれぬかもと心配しましたが、自分の意思で来てくださりましたね』
そう話すシダレザクラに向かって水の狐が導いてくれたなどと誰が言えようか。
曖昧に頷くリリシアにシダレザクラは語りかける。
『この森に来て四世紀は経ちましたが、妾は誰の杖にもなりませんでした。時には力ずくで手に入れようとする輩もいましたがね』
と謎の昔話を始めるシダレザクラ。その話を黙って聞く以外の道はリリシアにはなかった。
『けれど、そなたがフルミンウォーレに入学すると聞いて…妾は感じたのです。水狐のプリゼノであるそなたこそ、妾の持ち主に相応しいと』
そして、決して散ることのない花が咲いた柔らかな枝をそよがせてシダレザクラは続けた。
『どうぞ、妾を杖として下され。そなたの為ならば、この身を捧げましょう』
「…え?」
木々は持ち主を選ぶ、とはこういうことなのだろうか。まさか本当に木が話すとは思わなかった…
けれど、リリシアもシダレザクラに何かを感じていた。この木こそ、私の探し求めていたものなのだという気持ちが大きくなってゆく。
決心したリリシアは、杖を創り出そうと腕を構えた。するとシダレザクラは思い出したかのように続ける。
『そういえば、ハナモモがそなたに会いたがっていましたね。妾が案内して差し上げましょう』
そうシダレザクラが言い終わると、私は手を円を描くように回して
「汝、我が杖となりて我に力を与えよ!イーテン、杖!」と唱えた。
その瞬間、あまりにも強い光がシダレザクラの枝の一つ一つ、幹や花からも放たれ、直視できずに目を細める。
強い光が収まると、リリシアの目の前にゆっくりと光を伴って杖が降りてきた。
長さは30センチメートルくらいで、深いこげ茶色に銀に光る細い枝のようなものが巻きついていた。
手に取ってみると、私の手にしっくりと馴染んだ。まるで私の為に創ったような…いや、事実そうなのだろう。
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コヨリ - たかさん» スプラトゥーンと全く関係ないですけどね(笑)。今後ともよろしくお願いします。 (2016年7月20日 22時) (レス) id: 67d07cb40f (このIDを非表示/違反報告)
たか - 新作来たー (2016年7月20日 19時) (レス) id: 1f4e2973eb (このIDを非表示/違反報告)
阿須波(プロフ) - コヨリさん» あ、更新ヤッターって意味なんで大丈夫です。 (2016年7月17日 11時) (レス) id: 2cfe1139d2 (このIDを非表示/違反報告)
コヨリ - 阿須波さん» 最低一回は一日に更新するようにします…よほどのことがない限り (2016年7月17日 11時) (レス) id: 67d07cb40f (このIDを非表示/違反報告)
阿須波(プロフ) - 更新♪ (2016年7月16日 19時) (レス) id: 2cfe1139d2 (このIDを非表示/違反報告)
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