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「笛?」
「ハールメンの笛吹きって知ってる?ほら、グリム童話の。」
「あぁ、確か裏切られた男が笛を使って子供を攫い消えたとか言う…。」
「それそれ。その童話を元に呪物化した代物なんだ、コレ。音色で生物を引き寄せるのが童話の話。んで、コレは音色で呪力を引き寄せる事が出来る。というか取り込む。呪力を蓄積するだけの呪物と言ってしまえばそれまでだけど、容量が凄いんだ。
いやぁ、満タンになった所は初めて見た。大体Aの睡眠期10年分を減らすレベルだぜ?コレ。」
「10年分!?こんなに小さい笛の中にそこまでの呪力を溜め込んでるのか…。」
顎に手を当て、まじまじと笛を眺める夏油。
楽しそうに説明する五条の傍らで、伏黒がやれやれと言った素振りを見せる。
「回収した時既にほぼ満タンだった。それでもここまで2年かかった。とんだ呪物があったもんだな。」
「サボってたんじゃなくて?」
「本気で言ってんのか。」
「僕が冗談言うと思う?」
「知らねぇよ。」
やはり性格上相容れないのかギスギスした言葉を交わす間も、五条と伏黒は冷ややかな笑みを絶やさない。
ここにAが居れば多少は違うのかと夏油は人知れず思ったが、ふとした疑問を五条に尋ねる。
「けど、何故この男に頼んだんだい?呪物を回収して笛を吹くだけなら他の術師でも出来そうだと思うけど。」
「あぁ、それは簡単。この笛さ、呪力を取り込むって言ったろ?面倒臭い事に奏者の呪力も吸っちゃうんだよ。だから呪力をもたない伏黒が適任ってワケ。なんなら近くにいるだけでも吸い取られるから迂闊に回収出来なかったんだよね。今僕らが無事なのは単純にコレが満タンだから。だからこの中の呪力全部Aにあげたらぶっ壊すつもりだよ。」
「また貯めるのは厳しいのか?」
「それこそウン十年かかるんじゃない?」
「なるほどね。それなら直接Aに供給する方がいいか。」
「そういう事!」
満足そうに頷いた五条は、早速というように笛を手に取った。
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にゃーちゃん - 尊いです…!!!!面白過ぎて一話から一気読みしちゃいました(*´ω`*)更新頑張ってください!楽しみにしてます! (2022年8月8日 10時) (レス) @page35 id: e862c91e4d (このIDを非表示/違反報告)
みゆ(プロフ) - 紅蘭さん» ありがとうございます!なかなか更新出来ていませんが頑張ります( •̀ω•́ )و (2022年7月28日 23時) (レス) id: c9709ff1e2 (このIDを非表示/違反報告)
紅蘭 - 長く続いでますね〜!頑張ってくださーい (2022年7月21日 23時) (レス) @page27 id: cf67288c4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みゆ | 作成日時:2022年6月25日 18時