背に腹は代えられぬ ページ16
.
『上からも下からも、右からも左からも集中攻撃板挟み』
私にどうしろと？
紅茶の入ったティーカップをソーサーに置いた新堂は、お手上げと言うように両手をあげて見せた。
その様子に妖艶な微笑みを見せた女は、着ていた白衣を翻した。キッチンへと向けた足とは裏腹に話に関心はあるらしく、お代わりをカップに注いだら再び彼女の正面へと腰を下ろした。
.
「随分ね、」
『はぁ』
ひとつため息をついた。その姿を見てふ、と微笑を浮かべた女 宮野志保は興味ありげに足を組む。
宮野志保が灰原哀から本来の姿に戻ったのは、組織が潰れて直ぐのこと。
時をほぼ同じくして、子供が大人になるという超常現象を新堂は目にした。
正直、最初にあの赤井に真顔で言われたときには、あの男の頭の方を疑った。
あの犯罪ホイホイボーイこと江戸川コナンが、工藤新一にあれよあれよと戻ったときには自分の目を疑った。
あの超絶クールビューティーの灰原哀が、宮野志保にみるみるうちに戻ったときにはこの世界を疑った。実は黒の組織なんかいなくて、この世界がすべて自分の妄想だったり…考えられるすべての可能性を消去した上で、これが現実だと言うことを知った。
.
志保は、灰原の親戚だと少年探偵団に説明して、今は薬の研究をしながら、博士の家に居候し、なんやかんや開発を手伝っている。
組織がつぶれるまで、ほとんど面識のなかったふたりが何故お茶をするほど仲が良いのかと言うと、姿が戻って数週間は、新堂が何個か持つうちのセーフティーハウスに間借りをしていたからだ。
いくら、超絶社畜人間の新堂と言えど、女性で。フサエブランドを始め名だたるブランド品の数々がその家には隠されていた。そこからは言わずともわかるだろう。
女性の大好物は、金、イケメン、洋服、アクセサリーの4択である。無論、少女から女性の姿に戻った志保も当てはまる。
「聞いてくれる人がいないんでしょ？クリームサンドのお礼に聞いてあげてもいいわよ」
志保は、先ほど新堂からお土産としてもらった最近巷を騒がす老舗のクリームサンドを片手に言った。
端からそのつもりだった新堂は待ってましたと言わんばかりに体を前のめりにした。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 152人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ハル | 作成日時：2021年9月16日 19時
