ふたりの愛情論(仮)【赤井秀一】 (ページ2)

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風見裕也と言う男ページ2

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その男、警察庁警備局警備企画課・降谷零の右腕である。

一言で言うならば、クソほど真面目な男。

大抵の人間は、彼を面白くない人間、食えない男だと冷めた目を向けるだろうが、上司である降谷と同僚の彼女は違った。
新しい玩具を与えられた子供のように、目を輝かせ、彼のその愚直さを愛おしくいじり倒した。そう、それはまるで呼吸をするように。

(上司のことを人殺しだと勘違いしたときには、彼女にはそんなわけあるかとゲラゲラ笑われ、降谷には叱責はされずともお前はそんな風に僕を見ていたのかと、ジト目でグチグチと言われていた)

そしてこの男も少し抜けたもので、彼、彼女らの思惑など知りもせず、落ちこぼれであった自分に手を差しのべてくれたのだと本気で思っているのだ。

歳は既にアラサーを迎えていると言うのに、恋人のひとりやふたりも居なければ、遊び相手のさんにんやよにんもいない。

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彼の容姿を3つの単語で述べるとしたら、黒の短髪、特徴的な薄い眉毛、黒縁眼鏡である。決して不細工ではない。そばにいる上司の輝きが普通のものでは無さすぎるから見劣りするだけで。
眼鏡をとれば、そこそこイケメンでつり目の鋭い眼光さえも公安らしさが出ていてよいのだ。

仕事柄なのか、人柄なのか、同僚の彼女を除いては誰に対しても敬語で話す。警戒心が強く、誰に対しても社交的に振る舞うことが得意な質ではない。

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しかし、右腕と呼ばれるほどの実力は流石である。潜入中の身であり、容易に連絡のできない降谷の指示にはもちろん忠実。情報収集は当然のことながら、大っぴらに動きづらい上司に変わって関係各所、時には県外、時には海外へだって飛ぶ。

顔に怪我の一つや二つ出来ても仕事は休まない。公安警察の名に懸けてだ。

少し仕事に真面目すぎて、つい熱くなってしまったり、上司の無茶振りに応えようとするあまり空回りしてしまったり、間抜けなように見えるが、周囲からしてみれば降谷の右腕と呼ばれる人は彼一人しかおらず、降谷にとっても信頼できる右腕は彼しかいないのだ。

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さて、ここまであたかも彼が主役のように紹介されてきたが、彼はこの物語のモブにすぎない。

そういう少し残念な男、それが風見裕也である。

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