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松田が異動になると聞いた時、正直Aはやっとかと思った。
萩原も防弾チョッキを着ない常習犯だったが、ああ見えて統率力のあるタイプで、上司からも頼りにされていた。松田もずば抜けたエースだったけれど、協調性の無さは変わらずで、その問題行動は目に余るものばかりだった。
ゆるいクセっ毛と煙草とサングラス。
憧れ追い続けた背中。
彼はあっさりAの手を離した。
餞別だ、と。あの男はお気に入りの煙草を置いていった。半分ほど残ったそれに手を伸ばして、大嫌いなものだったのに火をつけてしまった。一吸いしてすぐにむせたけど、松田の匂いがした。
なにも届きやしてないが、心は満たされた気がした。
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萩原から、松田といい感じの人がいると聞いた時。Aはどうにも気持ちを抑えきれず、その人を見に行った。
一目見て、敵わないと思った。
周りが見惚れる美女。おまけに花形捜査一課。
いいやそんなの建前で。何より、彼女を見る松田の目がすべてを物語っていた。
ロングヘアーが好きって言ったくせに。
暑くてヘルメットの中で蒸れて、ケアが大変なのに伸ばしたのに。
同業者なんて有り得ないって笑ったのに。
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『それで、話したいことあるんじゃないの？』
「あ？」
『ここんとこ捜査だ何だって、飲み会ずっと断ってたじゃない。今日わざわざ集めたのは、何か言いたいことあったからじゃないの？』
Aの核心をついた言葉に、松田は自らその頭をくしゃくしゃとかいた。
「あー‥萩と伊達には言ったんだけどな、」
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作者名：ハル | 作成日時：2021年9月12日 0時
