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『こないだ久しぶりに交番勤務してた時の先輩に会ってさ、』
「そっか。元宮は交番勤務それなりにしてんのか」
『ふたりは引き抜きはやかったもんね。交番勤務の間に食べるアイスの美味しさ知らないんだっけ?人生損してるわ』
「俺もついこの間、鬼塚教官に会った」
『えっ、元気そうだった?』
「大分老けてたわ。手ぇ焼いてるって。ま、おまえらに敵う問題児はいないって一蹴されたけどな」
警察学校時代にやらかした愚行を思いだし、3人は苦笑いを浮かべる。
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『松田にこっそりケーキ買いに行かせたことあったよね』
「そうそう、あれ隣のクラスの教官に張れてさ。鬼塚教官の誕生日祝うためです、って口だけは達者だった元宮が粘って、仕舞いにはその教官感動で泣かせたんだったなー」
『後日、誕生日は半年後って張れてこってり絞られたけどね。あの教官の逮捕術、必要以上に投げられたもん』
「そうそう、いっつも傷つくってたよなー」
懐かしいな、なんて松田が少し寂しそうに笑う。きっとしばらくは、6人揃うことができないとわかっているからだろう。
そんな雰囲気を吹き飛ばすように、Aが明るい声をあげた。
『松田、覚えてる?私ら6人問題児って呼ばれてたわりに、研修の野外見回り6人で任されてさ。案の定、萩原と松田がふざけて降谷怒らせて。諸伏がふたりの間入って、伊達がおさめようとしてるうちに、私はぐれちゃって』
あーあれね!と萩原が頷きながらAを指差す。
「あん時、元宮が居ないこと一番に気付いたの意外にも陣平ちゃんだったんだよねー」
『あの時、私のこと見つけてくれた松田神に見えたわ』
「俺らのせいなのに、ゼロ激怒してたよな」
『松田だけだったんだよね、私が足痛めたの気づいてくれたの』
「わざわざ怖くて腰抜かしたって嘘ついて、おぶってやってさ。重かったわ」
『サイテー』
懐かしいと警察学校時代のエピソードが尽きない中、あれ、と萩原がすっとんきょうな声をあげた。
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作者名:ハル | 作成日時:2021年9月12日 0時