15 33side ページ15
俺と秀樹さんに新たに共通の知り合いができた。
名前は榛葉Aさん。
寮の近くに住む大学四年生らしい。
俺と秀樹さんとAさんは歳が近いのもあって割とすぐ打ち解けた。
歳の近い女性の知り合いが今までいなかったから、Aさんの存在はなんだか新鮮だった。
すごく溌剌として明るくて、裏表が無さそうな女性ですごく秀樹さんが好きになりそうなタイプだなとぼんやり思っていた。
案の定、秀樹さんが彼女を見る時の視線はものすごく優しくて、話している時は楽しそうだった。
本人は気づいてなさそうだったけど。
本音言うと、秀樹さんに誰かと付き合ってほしいとは露ほども思っていないけれど、でもそれを俺が言うのも、止めるのも変なのは分かっていた。
俺には秀樹さんを縛ることはできない。
秀樹さんは優しいし、いい人だし、見目も女の子みたいに可愛いからきっとほっといたら何もせずともふたりは付き合うに違いない。
かといって、秀樹さんの隣でただその時を待つのは俺にはできなかった。
だから、俺はある作戦に出ることにした。
その名も、"そまひで沼作戦"。
Aさんは野球の知識がほぼなかったから、言うなればこれからいくらでも如何様にでも知識を入れられるし、クリアな状態だからこそ偏った知識を入れることも容易いと思った。
俺はそれを利用することにした。
作戦の詳細はこうだ。
秀樹さんの居ない間に、彼女に俺たちそまひでのプレゼンをめっちゃする。とにかくする。
彼女の中で、秀樹さんの隣にいるのにふさわしいのは俺だということを植え付けてあげようと思った。
そうして彼女をそまひで推しにするのだ。
そうしたら、万一秀樹さんが彼女に告白しても、彼女は俺と秀樹さんの"そまひで"が好きだから断ってくれるんじゃないだろうか。
･･･。我ながら馬鹿馬鹿しい作戦だなとは思うけれど、秀樹さんに彼女を好きにならせないよりずっと簡単だと思ったし、よく彼女は俺たちを見て「仲良いね」と言っていたので、ある種頼みの綱な気がした。
決行は、秀樹さんがいなくなってから、フェニックスの期間がちょうどいい。
フェニックスの期間にとにかく少しでも彼女にそまひでを刷り込ませようと俺は決意した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 29人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：星見杏世 | 作成日時：2023年10月8日 3時
