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「大体、長岡くんは壮真にあれこれ許しすぎなんだよ」
「は？」
「『壮真ならいいよ』なんて言っちゃってさ。長岡くん壮真なら許容できること沢山あるでしょ？」
「いやあるけど…」
そこまで言うと、ほら！とAが俺と壮真の顔を交互に見比べる。
「そういうとこだよ長岡くん！」
「どういうとこだよ…」
「薄々思ってたけど、長岡くん、壮真に対してだけ許容するパーソナルスペースがゼロなの！ゼロ距離！！わかる！？」
そう言いながら彼女がぐいっとこちらに身を乗り出してくる。
「ばっ、近ぇよ…てかそうか…？割とみんなこんな感じじゃね？」
「うわ、しかも無自覚と来た。罪だね…長岡くん有罪！」
「有罪ですってさ秀樹さん」
「だからなんで壮真はそっち寄りなんだよ」
わけのわからないことを言うAとめちゃくちゃ楽しそうな壮真を呆れ顔で見つめる。
マジで俺がいない間に仲良くなりすぎだろこいつら…
呆れつつも、高校の同級生のようなノリで会話するふたりにちょっぴり疎外感を覚える。
「あ、ツマミ切れちゃいましたね俺適当になんか買ってきます」
「あほんとだ、壮真ごめんありがと！」
「わりぃな俺も行こうか？」
「Aさんひとりにしてどうするんですか笑秀樹さんは待っててください」
そう言いながら壮真が玄関の方に歩いていく。
「あ、秀樹さん」
靴を履いたところで壮真がこちらを振り返った。
「なに？」
「ふたりきりだからって変な気起こさないでくださいね？」
「しねぇよ！！さっさと行け！」
「はーい、行ってきます」
そう言って壮真がドアを開けた。
俺たちの会話にくすくすと笑う声が聞こえる。
バタンとドアが閉まる音が聞こえて数分、俺たちを静寂が包む。
あーくそ壮真が最後に余計なこと言うから変な空気に…
「ねぇあのさ」
静寂を破ったのは彼女の静かな声だった。
「長岡くんはさ」
「秀樹」
「？」
「壮真のこと下の名前で呼んでたろ、俺も名前で呼んで」
そう告げると何故か彼女の頬がみるみる赤く染っていく。
「え？なんで照れるの？こっちが恥ずかしくなってくるじゃん」
「いや、ごめっ、同い年の男の子呼び捨てにしたことなくて、その、気恥しいっていうか、あと、壮真のこと呼び捨てにしてるの見て自分も呼び捨てされたかったのかなとか、ちょっとその、かわいいなとか」
彼女はそう言って両の手で顔を隠す。
俺はその手に腕を伸ばした。
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作者名：星見杏世 | 作成日時：2023年10月8日 3時
