諦めきれない想いを胸に【サーティーン】

32話 ページ32

あのアダムの接触以来、またアダムが私に関わってくることもなくて過ぎていく日々

そのことに安堵してもう心配する必要はない

だけど、何故かどこかで寂しさを感じているのは…

きっと気のせいに決まってる


「A、そろそろアリーナに行くぞー」


そう私に呼びかける13


「ちょっと準備するから先行ってて！」


そう伝えると 早く来いよ と告げ、先にアリーナへと向かって行った

そんな13の後を早く追うために急いで試合の準備を終え、アリーナへと走っていると突然 グイッ と後ろから誰かに引っ張られる


「ッ！…13？」


もしかして待っててくれていたのかと思い、振り返ろうとすると


「振り向かないでくれ…」


そう言って私に伝えるこの声は…


「…アダム…？」


今度こそ振り返るとやっぱりアダムだった


「なんで…」


そう聞くと苦虫を潰したかのように顔を歪め、俯いてしまう彼


「…用がないならもう行くから」


そんなアダムを置いて行こうとすると


「ッ待ってくれ！」


パシリと強く掴まれる手首

そして私の手を引っ張りアリーナとは逆方向へと進んで行く


「ちょっと何してッ…「少しだけ…少しだけでもいいから俺について来てくれ」


そう懇願するように言うと、私の手をギュッと握りしめながら歩みを止めないアダム

そんな彼の手を本当は振り払うべきなんだけど


何故か振り払うことが出来ない自分がいて


そんな自分に戸惑う私とは対称にアダムは微かに嬉しそうな笑顔を浮かべている

そしてしばらくしてふと足を止めてこちらに顔を向けたかと思えば


「すまなかった、急に連れ出して…嫌だったか？」


そう私に問いかける彼の顔はとても不安そうに歪んでいて…


そんな顔をするなんて…ほんとずるいよ…ッ…


「…別に」


そう彼に対して肯定的とも捉えることが出来る返答をすると、ニコリと笑うアダム

そして私の両手をそっと優しく包み込んで


「なら今だけは俺を見てくれないか？」


ジッとこちらを見つめて、微笑みながらそう告げる彼の甘い誘惑に私は思わず


「…分かったよ…アダム…」


そう答えしまった

すると彼は嬉しいことを隠す様子もなくあどけない笑顔を私に向けた


ごめんなさい…13…ッ…

こんなにも軽率で最低な私をどうか許して


一度だけでもいいからまたアダムを見つめ直したいと思ってしまったの

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