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22話・約束を胸に。前へ ページ23

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凍えるような冷たさにSansは体を震わせた。

ただ、腕の中にある人間の体温だけは温かくて、引き寄せて抱き締める。


「泣きたかったのはアンタの方なのに。最後までオレばかり泣いてみっともなかったよな」


しかし、徐々に温かさは失われていき、人間の顔は青白く染まっていく。


「ごめんな。オレ、覚悟も何もかも足りなくって。中途半端で」


手を握って微笑みかけるものの固く目を瞑る人間は当然反応なんてしてくれない。


「全て裏切ったんだ。生きる希望を与えたくせに失望させた。アンタの親友の遺言すら守らずにモンスター側についた。許せないよな。怒ってるよな。当然だ。もっと責め立てて怒鳴ってくれたっていいんだぜ?」


逃さぬようにと傷つけてしまった人間の細い足から未だに流れる血が真っ白な雪を赤く染めていく。


「痛かっただろ。苦しかっただろ。憎かっただろ。今からでも遅くない」


傷口を撫でれば、赤に染まった自らの手をグッと握りしめた。生暖かい。だが、その温もりは途端に消えていく。

体全体の温もりも冷たくなっていく。流れる血も次第に固まっていく。柔らかな体だって次第に硬直していき、肉の塊へ変化する。

ただの死体となっていく。


「なぁ、Aッ…お願いだから返事をしてくれ」


片手に収まった琥珀色の魂を持っている限りそんな願いが叶うわけがないというのに。願ってしまう。

何故なら、心が痛くて、苦しくて、辛くてたまらないからだ。

殺してしまったことも。自分勝手な行動ばかりとった愚かさも。

何より…これからの未来を考えるだけで。

託された約束がどれほど重いものなのか分かっているから逃げ出したくなる。

でも、逃げることをアンタは罪悪感で縛って許してくれない。

しばらくその場を動けないでいた。すると、雪がしんしんと降り始めて空を仰ぐ。

かつて5番目の人間を見殺しにした景色のようだと思った。あの日もこんな風に雪が降っていてとても寒かった。

それぞれ二人の笑顔が蘇る。そんな二人を血に染め上げて見殺し、直接手にかけた罪。

決して忘れない。

Sansは溢れる涙を塞ぐように目を閉じて誓った。


「A。オレはこれから先…生涯にわたって心に刻むよ。この罪悪も出来事も何もかも」


約束だもんな。とSansはAの亡骸を抱き上げた。

後から駆けつけたモンスター達を横目にAの死体と魂を持って王宮へと向かった。

その頬にはもう、涙は流れていなかった。

23話・7番目の人間→←21話・最悪な嫌がらせ



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レイさん - 最後まで読みました。まじで泣きましたね))))号泣です(`;ω;´)作者さん神様かな?そうだね。次回作にも期待です(´;ω;`) (2023年2月26日 18時) (レス) @page28 id: fadc276a96 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - P様さんさん» コメントありがとうございます!原作がとても素敵なのでその設定を存分に活かした物語を書きたいと意識していました!そこを褒めて下さって嬉しく思います!他作品も読んでくれるんですか!?本当に喜びで胸がいっぱいです!最後までありがとうございました! (2022年12月19日 17時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
P様さん - なんというか……お話しの入れ方が本当に神ですね!元々ある設定を活かしつつ、夢主とかのキャラを入れていくのがめっちゃ凄いと思いました!主様の他の作品も読んでみることにします! (2022年12月19日 16時) (レス) @page29 id: 44cbacd699 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - アレンシスさん» コメントありがとうございます!濃い友情物語に付き合ってくださって感謝です!それも最高だと言ってくださり本当に嬉しいです!くどくない恋愛…私に書けるでしょうか(笑)ですが、あっさりした恋愛も書いてみたい思いはあるので機会があればよろしくお願いします! (2022年8月23日 20時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
アレンシス(プロフ) - 本当に最高すぎません?面白すぎです!!!最初はやっぱり恋愛かな?と思っていましたがやっぱり予想を遥かに上回った友情で文句なんてないぐらい最高でした!次回作があれば今度こそ恋愛書いて欲しいです!出来れば余りくどくないやつを、、楽しみにしてます! (2022年8月23日 20時) (レス) id: 47ccef0445 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Omiso | 作成日時:2022年8月12日 0時

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