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2話・人間とモンスターの違い ページ3

トリエルは家に着いてすぐにAの腫れ上がった足に包帯を巻いて治療を施した。その後、Aはある部屋へ案内された。


「ここは貴方の部屋よ」


一人にしては広々とした空間にふかふかの大きなベッド、おもちゃまで置いてある。

地上にいた頃は自分の部屋など両親に与えられなかったAは、今までの待遇との違いに戸惑った。


「好きに使って構わないからね」


微笑むトリエルに素直にお礼は言えなかった。何故こんなに優しくしてくれるのだろう。モンスターという生き物は案外人間よりも情が厚いのだろうか。

だが、それは容易に納得できるものだった。

Aが知っている人間という生き物は醜くて自分勝手な者ばかりだった。

お金がないと愚痴ってその苛立ちをぶつけるように怒鳴りつけてくる父と母。

貧乏だと罵って集団で暴力を振るう周りの子ども達。

虐められてる、虐待を受けていると噂を立て傍観者で嘲笑ってくる近所の人たち。


ただ____その中で唯一輝いていた人間がいた。


Aと同じ境遇でありながら笑顔を絶やさないあの子。

怒鳴りつけてくる父と母に家を追い出されれば、必ず側にいてくれた。学校でいじめられれば庇って助けてくれた。噂をする人たちの言葉に耳を塞いでくれた。

どこまでも「親切」で心を拠り所だったあの子…親友。

だからこそ、地底へと姿を消した親友を見つけるためにここまで追いかけてきたんだ。

正直、部屋で休んでいる暇なんてない。だが、足が治るまでどうしようもないとAはトリエルにしばらくの間だけお世話になることを決めた。


トリエルは家にいる間に多くのことを教えてくれた。

正しい言葉遣いや料理、遺跡、パズルのことなど。必要とは思えなかったが、丁寧に教えられることが新鮮で彼女の話に聞き入っていた。

時より頭を撫でてくる温もりには慣れなかったものの嫌ではなかった。やはりモンスターは存外悪いものではない。

もしかしたら、あの子だってそのことを事前に知っていてあえてこの世界に飛び込んだのかもしれない。そして、何処かで幸せに暮らしているのかなという考えが浮かんだ。


「トリエル…さん」

「どうしたのかしら?」

「…数年前にここに人間が落ちて…ませんか?私はその子を探しにここまで来ま…した」


慣れない敬語でAはついにトリエルに目的を伝えた。時間を共にして信用したからこそだった。

だが、トリエルはそれを聞くなり見開いて目を泳がせた。

3話・偽りから耳を塞いで→←1話・親友を追いかけて



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レイさん - 最後まで読みました。まじで泣きましたね))))号泣です(`;ω;´)作者さん神様かな?そうだね。次回作にも期待です(´;ω;`) (2023年2月26日 18時) (レス) @page28 id: fadc276a96 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - P様さんさん» コメントありがとうございます!原作がとても素敵なのでその設定を存分に活かした物語を書きたいと意識していました!そこを褒めて下さって嬉しく思います!他作品も読んでくれるんですか!?本当に喜びで胸がいっぱいです!最後までありがとうございました! (2022年12月19日 17時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
P様さん - なんというか……お話しの入れ方が本当に神ですね!元々ある設定を活かしつつ、夢主とかのキャラを入れていくのがめっちゃ凄いと思いました!主様の他の作品も読んでみることにします! (2022年12月19日 16時) (レス) @page29 id: 44cbacd699 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - アレンシスさん» コメントありがとうございます!濃い友情物語に付き合ってくださって感謝です!それも最高だと言ってくださり本当に嬉しいです!くどくない恋愛…私に書けるでしょうか(笑)ですが、あっさりした恋愛も書いてみたい思いはあるので機会があればよろしくお願いします! (2022年8月23日 20時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
アレンシス(プロフ) - 本当に最高すぎません?面白すぎです!!!最初はやっぱり恋愛かな?と思っていましたがやっぱり予想を遥かに上回った友情で文句なんてないぐらい最高でした!次回作があれば今度こそ恋愛書いて欲しいです!出来れば余りくどくないやつを、、楽しみにしてます! (2022年8月23日 20時) (レス) id: 47ccef0445 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Omiso | 作成日時:2022年8月12日 0時

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