15話・生き残った者がすべきこと ページ16
Aは無気力な顔からポロポロと涙を流してフッと笑顔を零した。
親友の死の悲しみは勿論だが「ずっと親友でいよう」と約束したことが破られた事実に自分の存在意義は何だったのかという喪失感が大きかった。
それが解消された今、Aの心は先ほどより穏やかだった。
「そっか…ありがと。サンズ。それが聞けただけでも私は…嬉しい。嬉しいよ」
涙をこぼすAをSansは優しく抱き締めた。こんな方法でしか慰め方が分からなかった。
すると、Aは背に手を回してSansの胸元に顔を押し付けた。
「サンズは優しいんだね。こうやって抱き締めて慰めてくれて。でも…」
フッと胸元から顔を上げたAは既に泣き止んでいた。
「私を殺すんでしょう?」
ポツリと呟かれたその言葉に酷く動揺した。
そうだ、オイラはアズゴアの代わりにこの子を殺すと宣言した。
「いいよ、もう思い残すことは何もないから」
「…ッ」
こんな小さな子供に死を覚悟させてしまうことに違和感を覚えた。
本当にこのままでいいのか?
オイラは何のためにここまでAを延命させたんだ?それは、あの子の遺言を覚えていたからだ。Aを守ることを託された。それは、最後まで生かして欲しいということに繋がる。だったら…
「…いいや。アンタは生きるべきだ。ガキンチョが殺されることを簡単に受け入れるな」
「!」
「それにアンタが死んだらあの子のことを誰が一番に想い続けてやれるんだ?あの子の存在を周りに伝え続けるのも供養してやるのも全部、親友のアンタしかできない仕事だろ」
すると、全てを諦めかけていたAの瞳に光が宿った。
「〜ッサンズ…そうだ…そうだよね!私が生きていないとあの子のことを想うことすら叶わなくなるんだ。私はあの子の魂の尊さを周りに伝え続けたい。あの子の棺桶に花束を捧げ続けたい。そのために…生きることを諦めたくない!」
そうして無邪気に笑ったAにSansもつられるように笑顔を浮かべた。
これで少しは約束を果たすことへ近づけただろうか?と天を仰いであの子へ問いかけたが、当然返事はない。
Sansは自信で満ち溢れていた。いい方に風向きが変わっている気がして根拠もなくこの現状が何とかなるだろうと思い込んでいたのだ。
しかし、現実はそう甘くなかった。
Aを殺すことに対するモンスターたちの執念深さ。人間側につくことが一体何を意味するのか。
理解も覚悟も何もかも足りなかったのだ。
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レイさん - 最後まで読みました。まじで泣きましたね))))号泣です(`;ω;´)作者さん神様かな?そうだね。次回作にも期待です(´;ω;`) (2023年2月26日 18時) (レス) @page28 id: fadc276a96 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - P様さんさん» コメントありがとうございます!原作がとても素敵なのでその設定を存分に活かした物語を書きたいと意識していました!そこを褒めて下さって嬉しく思います!他作品も読んでくれるんですか!?本当に喜びで胸がいっぱいです!最後までありがとうございました! (2022年12月19日 17時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
P様さん - なんというか……お話しの入れ方が本当に神ですね!元々ある設定を活かしつつ、夢主とかのキャラを入れていくのがめっちゃ凄いと思いました!主様の他の作品も読んでみることにします! (2022年12月19日 16時) (レス) @page29 id: 44cbacd699 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - アレンシスさん» コメントありがとうございます!濃い友情物語に付き合ってくださって感謝です!それも最高だと言ってくださり本当に嬉しいです!くどくない恋愛…私に書けるでしょうか(笑)ですが、あっさりした恋愛も書いてみたい思いはあるので機会があればよろしくお願いします! (2022年8月23日 20時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
アレンシス(プロフ) - 本当に最高すぎません?面白すぎです!!!最初はやっぱり恋愛かな?と思っていましたがやっぱり予想を遥かに上回った友情で文句なんてないぐらい最高でした!次回作があれば今度こそ恋愛書いて欲しいです!出来れば余りくどくないやつを、、楽しみにしてます! (2022年8月23日 20時) (レス) id: 47ccef0445 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Omiso | 作成日時:2022年8月12日 0時