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12話・罪の肩代わり ページ13

棺桶で安らかに眠る親友の姿。

周りに敷き詰められた花の中で横たわる親友は美しかった。

Aはそんな親友の元へ不安定な足取りで辿り着き、棺桶に縋り付いた。


「ッハハ…こんな所に眠って…何かの冗談だよね?」


問いかける声に一切反応しない。いつもだったら優しげな笑顔を見せてくれるというのに。


「悪ふざけもいい加減にしてよ」


そっと手に触れてみれば異様なほど冷たくて、額同士を合わせてみると呼吸すら伝わってこない。


「嘘だッ…約束した…私とずっと親友でいてくれるって」


それでも何度も親友を呼びかけるAにアズゴアは肩に手を置いた。


「キミの親友は私たちモンスターのために自ら魂を捧げてくれたんだ。こんなことを言うのもなんだが…無理やりではない。あの子がそう望んだ。だから、受け入れてくれ」

「〜ッ!!!」


Aはその言葉を拒絶したい一方で腑に落ちてしまった。

あの子はどこまでも「親切」な子だった。自らの幸福より目の前の他人の幸福を願う子だった。きっと私はあの子に親切にされた大勢の中の一人だっただけだ。

だから、簡単に私を置いてあの子は先に逝ってしまった。

そう納得したAはついに親友の「死」を受け止めてその場に崩れ落ちた。そんな少女にアズゴアは語りかける。


「私たちが人間と戦争した歴史は知っているだろう?敗北しこの地底に永遠に閉じ込められたままだ。また、私はッ…大切な我が子を人間に殺された。皆が皆、人間に対して怒りを覚えている。そして、この地底を抜け出す為には人間の魂が7つ必要なんだ。だから…すまない。分かってくれ」


こちらの心情をお構いなしにモンスターの事情を聞かされたAは他人事だった。今更そんな話をされてもどうでもいい。

私はあの子みたいにその歴史に同情する親切さを持ち合わせていない。


「戦争なんて知らない。私は貴方の子供を殺してない」

「!」

「私たちが何をしたっていうの?それは昔の人たちの話で私たち何もしてないよ…ッ…人間という種族だからダメだったのかな?同族だから同じ罪を背負わなければならないの?…本当はあの子が魂を捧げる必要なんてなかったはず。それなのに親切なあの子は…ハハッ…馬鹿馬鹿しい」


アズゴア王はその言葉に耳を傾けなかった。

いや、正確にいえば聞かなかったことしたのだ。耳を傾ければ罪悪感に押し潰されてしまいそうだったから。


「6番目の人間よ。せめて最後の願いを聞いてやろう」

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レイさん - 最後まで読みました。まじで泣きましたね))))号泣です(`;ω;´)作者さん神様かな?そうだね。次回作にも期待です(´;ω;`) (2023年2月26日 18時) (レス) @page28 id: fadc276a96 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - P様さんさん» コメントありがとうございます!原作がとても素敵なのでその設定を存分に活かした物語を書きたいと意識していました!そこを褒めて下さって嬉しく思います!他作品も読んでくれるんですか!?本当に喜びで胸がいっぱいです!最後までありがとうございました! (2022年12月19日 17時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
P様さん - なんというか……お話しの入れ方が本当に神ですね!元々ある設定を活かしつつ、夢主とかのキャラを入れていくのがめっちゃ凄いと思いました!主様の他の作品も読んでみることにします! (2022年12月19日 16時) (レス) @page29 id: 44cbacd699 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - アレンシスさん» コメントありがとうございます!濃い友情物語に付き合ってくださって感謝です!それも最高だと言ってくださり本当に嬉しいです!くどくない恋愛…私に書けるでしょうか(笑)ですが、あっさりした恋愛も書いてみたい思いはあるので機会があればよろしくお願いします! (2022年8月23日 20時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
アレンシス(プロフ) - 本当に最高すぎません?面白すぎです!!!最初はやっぱり恋愛かな?と思っていましたがやっぱり予想を遥かに上回った友情で文句なんてないぐらい最高でした!次回作があれば今度こそ恋愛書いて欲しいです!出来れば余りくどくないやつを、、楽しみにしてます! (2022年8月23日 20時) (レス) id: 47ccef0445 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Omiso | 作成日時:2022年8月12日 0時

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