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26話 ページ27

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人間側が動くのは早かった。

モンスター達、全員にとある山奥の開けた場所を指定地にして集まれという命令を送った。

あからさまな挑発行動だ。それでも余裕な態度を取れるのはモンスターが気弱で抵抗しない生き物だと判断しているからだった。

そこにまたモンスターを倒すべく集められた若者の志願者達。たいして鍛え上げられておらず、ただ銃を持たされて軍服を着ては駄弁っているだけだ。数だけはそれなりに多い。

その大勢の中に私もいる。慣れない銃に重みを感じて今から起こるであろうモンスターとの戦いに震えて怯えているのは私を含めてごく少数だった。


「Aー?何怯えてるの?人類のための戦いになるんだよ。それにモンスターはただの害虫だし。罪悪感なんて考える必要ないでしょ」


ケラリと笑う隣にいる親友は私の背中をバンバン叩きながら今か今かと戦うことを楽しみにしていた。

幼い頃から教え込まれたモンスターへの偏った知識。そのことにより大抵の若者たちはモンスターに対しての命を軽々しく見ていた。

人類の存続を脅かす敵だから始末するのは当然だと。



「来たぞ!!!」


その一言に皆がそちらに顔を向ける。ハイエナのような眼差しでモンスターたちの姿を捉えた。

モンスターの数はせいぜい100ぐらいだった。対して人間たちは万を超えている。

そして、人間側の兵士をまとめる人物。指揮官がスピーカーを手に取り、スッと息を飲み込んだ。


「よく聞け!モンスター共!今からお前らに宣戦布告をする!我々はお前らを排除すべく団結し戦争に挑む。滅亡の運命を受け入れるがいい。突撃ー!!!」


司令塔の声が辺り響いたのと同時に皆が動き出した。

我先にと走り出すのを横目に私は足を止まらせてその背中をただ眺めていた。


やっぱり無理だ。殺すなんてそんなこと出来ない。


脳裏に浮かぶのはサンズと関わった幼い頃の日々。そして泣いて詫びる愚かな私を抱きしめてくれた優しさ

彼らにも心があると知った。優しさがあると知った。ただの害虫なんかじゃない。

だけど、それを伝える手段も力も持ち合わせない私ができることはただ一つ。


何もしなかった。


呆然と走っていく若者たちの背中を眺めた。その先には銃が向けられたモンスターたち。

パンッ!!!と火薬の匂いと共に次々と銃弾の音が鳴り響いた。そのあとに舞った血飛沫は……


モンスター側ではなかった。


耳をつんざくような悲鳴を上げたのは人間達だった。

27話→←25話・反旗を翻すケツイ



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リリィ・スノー(プロフ) - すごくいい作品でした。シナリオ、終わり方など、感動してしまいました。この作品に出会えてよかったです。とっても私の好みにどストライクで… (2023年3月18日 10時) (レス) @page34 id: 24a11843b1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - P様さんさん» P様さん!こちらの作品も読んで下さりありがとうございます!貴方様に感動を与えることが出来て嬉しく思います!イラストまで褒めていただいて…作者は幸せ者です😭最後までありがとうございました! (2022年12月19日 17時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
P様さん - 読み終わりました!!泣きました!!最高です!小説もそうなのですが、イラストも大好きです! (2022年12月19日 16時) (レス) @page34 id: 44cbacd699 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - ユンユンさん» コメントありがとうございます!最高だなんて…素敵な褒め言葉をいただいて嬉しいです!また、すれ違いシチュエーションは本当に美味しいですよね!(?)私も大好物です!貴方様を楽しませられて本当によかったです!ありがとうございました! (2022年12月19日 8時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
ユンユン(プロフ) - 一言言わせていただきます。最高です!!!私も時々喧嘩とかすれ違いのシチュエーションを考えるんですが、もうこの作品は私の大好きストーリードスレートでした!そして泣きました!これからも応援してます! (2022年12月18日 22時) (レス) @page34 id: 34d5562353 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Omiso | 作成日時:2021年12月5日 0時

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